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2021/05/02

第38話

容態

「柊……体、調は……?」
「……はは、元気だよ」

ベッドに横になったまま、眉を寄せて言う柊を見ると苦しくなった。

「……うそつき」
「嘘じゃないよ……麗奈がいるときは、少なくともいつもよりは元気だ」

その"いつも"の基準が現在進行系で下がっていることを私は分かっている。

「この前ね、学生の小説コンクールっていうのがあって、短いけど自分で書いて応募してみたの」
「それ、前にも聞いたような……?」
「うん、言ったよ。それの結果が出たよーっていう話」

鞄から一枚の紙を取り出し、広げて"ばーん"と柊に見せる。

「最優秀賞、もらいましたー!」
「すごい!すごいよ麗っ………たた……」
「柊!」
「大丈夫。最近じゃよくあることだから……」
「あんまりはしゃがないようにしなきゃね」
「今のは最優秀賞受賞を発表した麗奈が悪いよ」
「私のせいですかい」
「でも……ほんとにすごいよ、麗奈は。ちゃんと夢があって、ちゃんとそれに向かって進んでる」
「…………うん」
「俺にも夢があるんだ。……っていうか、今できた」
「え、なになに?」
「麗奈の書く小説に登場すること」

それって全部私の仕事だよね?
でも確かに、"榊原 柊"という人が小説の中に出てくるのなら、きっと映えるだろう。

「分かった!デビュー作に出させてあげるよー」
「じゃあ一番に買って一番に読もう」
 ガラガラガラ
「榊原くん、診察の時間だよ」
「あ、じゃあ私はこれで。じゃあね、柊」
「あ、麗奈」
「ん?」
「約束」
「え、でも先生が……いない!……わかったよ。」

ベッドの側まで行き、ハグをする。

「じゃ、私帰るよ?」
「もうちょっとだけ……このまま」

柊は、震えていた。
少し経って、病室から出ると先生が立っていた。

「あ、すみません、お待たせしてしまって……」
「いえ、お気をつけて」
「ぁ……あの!」
「はい……?」
「しゅ、柊は……あと、どのくらいですか」


「いいんですか……」


「お願いします」
「……半年、もつかもたないか。くらいです」
「っ…………そう、ですか。呼び止めてしまってすみませんでした。」

帰り道、1人歩きながら泣いた。
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