第10話

吸血欲とは別の欲
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2021/01/27 11:09



今……?

そんなの愚問だ。

こうやって極上の味を堪能できているのは、彼女のおかげだ。



僕
幸せだよ。あなたがこんなふうに飲ませてくれなかったら、僕は今もネズミの血を啜っていただろうから
あなた

あーちゃん……嬉しい




するとあなたが何を思ったか、僕の背中に手を回してきた。

そして、きゅっと力を込めて抱きしめる。

こんなことをされたのは初めてだった。

吸血される時、彼女はただじっと動かなかった。

だからこそーー。

僕の我慢していたものが……暴れそうになる。


僕
あなた……あんまり抱きしめられると
あなた

ん、何?




抱きしめられたことで、柔らかな感触が確かなものになる。

あなたの胸が、僕の体にあたっている。

……。

これまで何度我慢したことか。

あなたが大好きだからこそ、耐えていた。

吸血欲とは別の欲が溢れてきそうになっても、それは吸血欲だと言い聞かせた。

飲みたいだけだ。

これは、ただ飲みたいだけ。

触りたいなんて、そんなこと。





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