第13話

僕の救い
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2021/01/29 12:09



そう呟いて、視線を落とす。

いつかはきっと我慢の限界を超えていた。

そしたら、あなたに襲いかかって、無理矢理キスしたり……乱暴なことをしてしまったかもしれない。

それなら、今言っていたほうが、ずっといいと思った。

傷口が深くなる内に、いや……すでに深いけれど。

ああ、恥ずかしいことを言ってしまった。

僕は、ばかだな……。



あなた

ねぇ、あーちゃん




あなたの声。

その声は、驚くほど優しくて。

僕は、じわりと彼女のほうを見た。


僕
なに?
あなた

あーちゃんは……私のこと好きってこと?




なにを今さら訊いてくるんだろう。


僕
それは……もちろん……好きだよ
あなた

そっか。……私ね、嬉しいの

僕
え?
あなた

だって、私もあーちゃんが好きだから。
ま、まさか、その……キスしたいって
思われてたのは驚いたけど

あなた

でも、全然イヤじゃないし、
本音が聞けてよかったって思う




そう言って、にこっと笑いかけるあなた。


僕
あなた……
あなた

あーちゃんが悩んでたの
気づかなくて、ごめんね




ああ、そうか君は……そういう人だった。


あの時もそうだった。

吸血鬼だってバレた時も、あなたは優しい笑顔を向けてくれた。

拒絶しないでくれた。




やっぱり君は僕の救いなんだ。



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