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第13話

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" 私の感情をあなたに "













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5月半ば。

だいぶ気温が高くなってきた。

蒸し暑い日が何日も続く。

心春
あーつーいー!!
心春、さっきからそれしか言ってないじゃん
心春
だって暑いも〜ん

この『へや』は旧校舎。

築120年の。

もちろん、エアコンなんてあるはずなくて。

しかも、ここは密室。

私と心春の2人っきりの世界。

外の世界とは遮断しないといけない。

窓は全て閉めて。

ドアには鍵をかけて。

……もちろん熱がこもるわけで。

私も正直暑い。

唯一暑さを凌ぐものは、心春が拾ってきた扇風機ぐらい。

まったく……どこで拾ったんだか。

今の季節、この扇風機はこの『へや』で1番敬われる存在で。

今もカラカラと言いながら、私たちに風を運んでくれている。
心春はこの世界・・から出る予定はないの?
心春
えっ?何で??
夏休み、旅行とか行きたいな……って

私が誰かと旅行に……遊びに行きたいなんて思ったのは、初めてだった。

私、インドア派だし。

まず、「トモダチ」なんていないし。

いても多分、遊びに行きたいとは思わないだろう。

でも、心春とは遊びたかった。

もちろん、この『へや』での2人っきりの世界も幸せ。

誰にも邪魔されない、誰にも干渉されない。

だけど……心春と一緒なら。

どんな世界でも行ける気がしたんだ。
心春
そうだね……

心春が小さな声で呟いた。

下を向いているから、表情は見えなかった。

でも、「そうだね」ってことは「いいよ」ってことだよね……。

どうしよう。

すごく……胸がウズウズする。

感情なんてなかったはずなのに。

捨てたはずなのに。

何で……こんなに。

嬉しいんだろう。

心春と旅行に行けることが。

心春と外の世界に行けることが。

心春のそばにいられることが。

こんなに嬉しいんだ。

私……心春といる間は。





______ちゃんと感情を持ってる。






嬉しい。

幸せ。

楽しい。

愛おしい。

好き。

ああ……

自然に感じていた。

気づかないうちに。

全部全部。

私の大切な感情じゃない……。

なくしたはず、捨てたはずの感情。

心春が戻してくれた。

私にくれた。

凍った心を溶かして。

私に感情をくれた。

私に心をくれた。

気づかないうちに……私は。

こんなに素敵な贈り物をもらってたんだ。

心春。

やっぱり、心春が大好きよ。













心春
夏休みか……


私は心春の声に気づかなかった。