この時季特有のじめっとした暑さが部屋中を支配する。
髪がまとわりついた額にはじわりと汗が滲んで、とてつもなく気持ち悪い。
ああ、もうこれだから暑いのは嫌いなんだ。
滲んだ汗を大貴から渡されたタオルで拭う。
「ねぇ、なんでクーラーつけないの」
生ぬるい風しか来ない扇風機の前陣取ったまま動かない大貴へと問いかける。
てか自分だけ独占とかいい根性してるよね。
「だってまだクーラーつけるような時期じゃないでしょーよ」
「じゃあ扇風機の前に座り込まないでよ、わたし暑いよ」
「え、だってここ俺んち」
「なにそれ感じ悪いなぁ」
とか言いながら私は大貴が陣取ってる場所にぎゅうっと割り込むように腰を下ろした。
「急になんだよあなたさん 」
「だって暑いんだもーん」
隣に座る大貴を両手でえーいと押し退けて扇風機の前を陣取る。
そしたら大貴はまさか押し退けらると思って見なかったのか
面白い位にごろんと床へと転がってこけた。
ぷぷ、変なの。
「ちょっとなにすんの」
「今の大貴面白かったよ」
「別に俺笑いをとろうとしたわけじゃないんだけど」
今のは不可抗力でしょ、どう見ても。
なんてぶつくさ言う大貴を横目にふと良いことを思いついてしまった訳でして。
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編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。