「俺、あなたが居なかったら駄目だったと思う」
「へ」
今日は涼介が久しぶりのお休みという事で
最近購入した新品のソファに二人並んで
腰掛けながら私の家でまったりしていた時の事。
「ど、どうしたの急に」
作りたての紅茶をお揃いのマグカップに淹れて渡した途端
わけの分かんない事を言い出す涼介。
そんな彼の言葉に私は思わず目をぱちくりさせた。
「だからあなたが居なかったら今の俺は居ないなって事」
「それはいくらなんでも言い過ぎだよ」
「いや、違うな」
私の隣に座っている涼介はそう言いソファの前に置いてあるテーブルを軽くと叩いた。
あ、紅茶こぼれちゃったじゃんもう。
なんて思いつつ私はテーブルに置いてあった布巾でこぼれた場所を丁寧に拭き取った。
もちろん他の事をしている間もちゃんと彼の話には耳を傾けている。
ていうか今日の涼介変。すごく変。
「俺が色々と悩んでるとき側に居て支えてくれたのはいつだってあなただったろ?」
「…」
「こんな仕事してる俺の事ちゃんと理解してくれてるし」
「そ、そんな事ない。私なんもしてあげられてないよ」
唐突にそんな事を言われてしまうと少し昔の事を思い出してしまう。
涼介ががむしゃらに頑張って今の地位を手に入れた事。
そしてそんな涼介をただ影から見守る事しか出来なかった駄目な自分の事を。
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編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。