「あ、そうだアイス買いに行こうよ」
「…あのさ、お前俺の話し聞いてた?」
どこか不満そうな大貴を横目にわたしは
キャミの上に脱いでいた薄手のパーカーを腕に通して話を進める。
「確か大貴んちの近くにコンビニあったよね」
「あるけど、ってほんとに行くの?」
「当たり前だよー。こう暑い時は冷たいもの食べて涼しくならなきゃ」
さ、行こ?
そう言って彼の手を握り締めればもう何も言い返せなくなることをわたしは知ってる。
「わかったよわかった、じゃあ行こっか」
少し困ったような笑顔を見せながらもちゃんと
わたしの手を握り返してくれる大貴が本当に大好きだ。
「なんか大貴と手繋いで歩くなんて久しぶり」
「なー。外出てバレるのも色々大変だし」
お互い繋いだ手が二人の歩くリズムに合わせて
縦に揺れるのを見ていると自然と口元がにやけてしまうわけでして。
「ふふ、」
「ん?あなたどした ?」
「ううん、なんでもない」
なんかたまにはこういうのんびりしたのも良いなあと思ったのは大貴には黙って置くことにしよう。
こんな日も、
(たまにはいいんじゃない?)
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。