「でも俺は感謝してるんだよ。ありがとな」
「……、」
涼介はそんな私の気持ちを知ってか知らずかいつものように優しく微笑んでくれる。
そんなこと言われたら目頭がぎゅうっと熱くなって私の視界がじわりとぼやけた。
「あれ、もしかして泣いてる?」
「な、泣いてないよ」
涼介にバレないよう私はとっさに下を向いた。
だって嬉しかったんだ。
涼介が私の事そんな風に想っていてくれてたなんて。
私はただ君のお荷物になっていたんじゃないかって時々不安になっていたから。
「…鼻真っ赤だけど」
「これは元からです」
「おいおい嘘を言うな」
涼介は自分の言葉であたふたする私の顔をどこか面白そうに下から覗き込むと、
今度は赤くなった私の鼻をぎゅっとつまんできたのだ。
「ほんと泣き虫だよなあなたって」
「う、うるさいっ」
「はは、」
「もうっ、笑わないでよ」
「なあ、あなた」
「な、なに」
突然私の鼻をつまんだまま真面目な顔して見つめて来る涼介。
それより早く手を離して欲しい。鼻がね、凄く痛いんです。
「なんて言うかさ、俺今すっげー幸せだよ」
鼻の痛さなんてどうでもよくなるぐらいに君が余りにも幸せそうに笑うから、
「…どした?」
「涼介のばーか」
「はぁ?なんだよ急に」
「私も」
「へ」
「私もすっげー幸せだよ」
そう言って彼に言い返すようにして私は悪戯に笑ってみせた。
私と君の幸せ論
(今この瞬間全てが宝物)
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。