あれから、私は悠希と話してない。
学校で会っても、無視したり、されたり…
結菜に話すと、そう言われた。
篤哉颯天(とくやそうま)くんは、私のクラスメートで、悠希の友達。
少し安心した。
私は、小走りで綴さんの元へと向かった。
突然、綴さんがポケットからハサミを取りだし、振り上げた。
刺される覚悟で目をつぶった瞬間、私の前に影が現れた。
廊下に、ビリっという音が響いた。
篤哉くんの服の袖が破れて、出血している。
悠希が綴さんに向き直る。
悠希の額からも、出血していた。
「叶」…久しぶりに悠希に呼ばれた名前は、いつもより特別に感じた。
綴さんが泣きながらそう言った。
悠希は、何かを考えている。
綴さん、本当に悠希のこと好きなんだ…。
綴さんの瞳が、一瞬でキラキラ輝いた。
…綴さんがそう言うと、悠希は優しく笑った。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。