夜だから声を抑えるようにはしているが花の生えた部分が痛い。
下半身はほとんど花に侵されてしまっていた。
名前を一度読んだだけでおこしてしまった。少し申し訳ない。
タクラくんは立ち上がって布か何かを取りに行こうとしたが止めた。
不思議ともう痛みは感じなかった。
上半身もほとんど埋め尽くした花を見てタクラくんはおろおろしている。
可愛いな。好きだな。
……あぁ、
タクラくんは私に近づいて……
キスをしてくれた。
そして私の体は花に埋め尽くされ……
顔にかかる前に止まった。タクラくんが止めてくれた。
そう言って止めてくれた。
タクラくんは優しいなぁ……
そして優しく抱き上げて石の箱に入れてくれた。
もう何も悔いは無かった。昔の辛かった事なんてもうどうでもよかった。
私は今幸せだ。幸せで埋め尽くされている。
この体に生える花は「幸せ」で私に「死」を代償に幸せを届けてくれたのかもしれない。
タクラくんと離れることになった。だからこの花は嫌い。
でもこの花はタクラくんに出会わせてくれた。
だから私はこの花を憎みつつも愛している。
タクラくん。
大好き「だった」よ。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。