俺は「いらない子」として生まれてきた。
そんな言葉ばっかり。
ずっとそう思ってたけど怖くてできなかった。
体には無数の痣が当たり前のように並んだ。
いつも理不尽に傷つけられた
ずっと思っていた。
誰か自分を必要としてくれるひとが助けに来て欲しかった
でも、また殴られるのがこわくて逃げ出せなかった。
そんなとき
隣の部屋から怒号と大きな物音がした。
最初は自分も飛び火を食らうのではと震えていたが、すぐ静かになったので様子を見に行った。
お母さんはお腹から大量の血を出し、お父さんは首から血を出して倒れていた。
お父さんの手には包丁が握られていた。
お父さんとお母さんは愛しあっていたんだと思った。
多分お母さんを殺して後を追ったのだと思った。
なんてロマンチックなんだ。
ぼ く は だ れ に も あ い さ れ て な い
お父さんの手から包丁を抜き取り死体を切り刻んだ。
ただ怒りで体が燃え尽きそうだった。
自分がどうしたいのか、どうなりたいのかなんて分からなかった。
でもただ死体を切り刻んだ。
そこで僕は思い出した。
「逃げ出したかった」んだと。
なんで忘れていたんだろう。
もう僕を傷つける人はいない。
大切にしてくれる人と一緒に生きよう。いなければ
そう思った。
本心は「死にたい」で埋め尽くされていたが死への恐怖と明日の期待はどうも消えなかった。
生きるんじゃ無くて死に方を探す。
僕に与えられたのはそんな人生だけだと思った。
… あぁ
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。
登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。