頭上で羽ばたいていた彼が、私の前に降り立った。
よく見ると角の先は鋭くて、
浅黒い肌と長い爪は近寄りがたい怖さを感じる。
でも角度によって反射する目が猫みたいに綺麗でーー
ぐぐ…と悔しそうに尖った歯を噛み締める彼は、涙目でこちらを睨んだ。
口調も荒く、彼は叫んだ。
まさか、今までのイケMENは全て悪魔の仕業だったなんて……。
さらなるファンタジーに頭がパンクしそう。
思わず称賛の眼差しを向けると、彼はなんだか居心地悪く目を泳がせた。
彼がキョリを詰めてきて肩がビクリと跳ねる。
私を見下ろすロキ。
つつ…と頬をなぞる鋭い爪はひやりと冷たくて、
本能が逃げろと叫ぶ。
背中が壁に当たってとっさに逃げようとすると、彼の大きな羽が左右を塞いだ。
彼にすっぽりと包まれた状態に、ドキドキと心臓が鼓動を速める。
ロキの綺麗な瞳と目が合って、また心臓が跳ねる。
なぜか彼は心底悔しそうに、そして顔を真っ赤に染めて私を睨む。
すごく悔しそうにうなだれた彼。
私の横の壁に角がグサリと刺さって気が気じゃない。
でも、なんだか悩んでいた問題が解けて
すっきりした気分だ。
ひやりと背中に汗が伝う。
ロキは嬉しそうに微笑んで私の耳元で囁いた。
恐怖のせいか、体が無意識に震える。
真剣なギラついた目で見つめられて、足がすくんだ。
突然ぎゅっと抱きしめられて、心臓がドクンと跳ねる。
真剣な声が身体に響いた。
ぐるぐるする頭の中を整理するのに精一杯だ。
涙目でやけくそなロキ。
でも、なぜか私を応援してくれてるみたい。
ほんの数秒の瞬きの間に、悪魔ロキは姿を消した。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!