第2話

あざと可愛い彼に襲われました
7,857
2019/10/11 09:00

私の上にまたがっているのは可愛い顔のイケメン。
ふわふわの柔らかそうな髪に、淡い栗色の瞳。

彼は口を塞いでいた手を離し、のし掛かるように私に抱きついてきた。
??
??
ぎゅーー……
恋花って、抱きごこち最高だね
恋花
恋花
ひぇああああ!!
恋花
恋花
(へ、変な声出た!!それに…ふわふわな髪があたって首筋がくすぐったい!)
??
??
恋花、可愛い…
恋花
恋花
(か、可愛い?!)

鎖骨に彼の吐息がかかって、心拍数は急上昇。

顔が熱くて沸騰ふっとう寸前…!

まるで高機能電気ケトルみたいに、顔の熱でお湯が沸かせそう。
アヤト
アヤト
えーっと、……僕の名前はアヤト!
恋花の好きなように呼んで?
そ、その前にちょっと待って!

これって妄想?現実?
失恋のせいで、私の頭おかしくなっちゃったの?!

それに、どうして私の名前を知って……
恋花
恋花
(もしかしてイケメンな不審者?!)

私はベッドサイドに置いてあるスマホを確認し、そっと手を伸ばす。

ぱし!
アヤト
アヤト
だめー!
今110番しようとしたでしょ
恋花
恋花
(バ、バレてる!!)
アヤト
アヤト
ひどい……僕のことそんなに嫌い?


涙目で首をかしげる姿は、捨てられた子犬みたい。

ウルウルと上目遣いで見つめられたら、
そんなの……そんなの!
恋花
恋花
き、…‥(嫌いなわけないよっ!)
アヤト
アヤト
…き? 嫌いなの?
話したくない程…嫌い?
恋花
恋花
ちが、……!(違う!!)
恋花
恋花
う、あ……(そう、これは病気! イケメンの前では緊張して話せなくなっちゃう…私の厄介な持病なの!!)
アヤト
アヤト
僕、3分で消えちゃうんだよ…
正確にはあと2分26秒、25、24、
恋花
恋花
えっ!!

小さな声でカウントする姿が、あまりにも寂しそうで……。

私はぎゅっと目を閉じて必死に言葉を絞り出す。
恋花
恋花
あの……その……アヤトくんの顔が
可愛すぎて!ち、近いし!
私…眺めてるだけで精一杯なのっ!
アヤト
アヤト
僕は…
眺めてるだけじゃ足りないよ?


ふわりと優しく抱きしめられて、アヤトくんのアロマみたいな優しい香りが体を包み込んだ。
恋花
恋花
こ、これ以上は心臓がっ…
(破裂する!!)
アヤト
アヤト
……わかった
ならこうすればどう?

彼は少し諦めたように指をぱちんと鳴らした。

ぽんと弾ける音とともに、目の前に大きな猫形の抱き枕が現れる。
アヤト
アヤト
抱き枕を挟めば、
僕の顔は見えないでしょ?

それに…

私の上からおりた彼は、
今度は横に寝転がって抱き枕越しに私を抱きしめる。
アヤト
アヤト
こうすれば恋花ごと抱きしめられるし!
恋花
恋花
う、うん…
これなら大丈夫…かも

手触りのいいふわふわの抱き枕のおかげで、心臓も落ちついてきた。
恋花
恋花
この抱き枕、フワッフワ…!
目の前の抱き枕に夢中になっていると、拗ねたような声が聞こえてくる。
アヤト
アヤト
ねーえ!
抱き枕より僕に構ってよ…
今だけでも彼氏のこと気にしてよ!
アヤト
アヤト
残された時間だって、
もうあとちょっとなんだし
恋花
恋花
ご、ごめん!
でも……本当に消えちゃうの?
アヤト
アヤト
うん、僕は所詮カップ麺だからね
消耗品なんだ
アヤト
アヤト
でも恋花から僕にキスしてくれたら、
僕はずっと恋花のカ・レ・シ

耳元で響く、少し高い透き通るような声。
恋花
恋花
え……わ、私からキス?!
そ、そそそんな!!
アヤト
アヤト
ムリなのはわかってる。僕はただ、
恋花と楽しい思い出が作りたいんだ

アヤトくんの無邪気な笑顔が抱き枕の向こうに見えて、胸がキュウっと苦しくなった。
恋花
恋花
手! 手つなぎたい…
アヤト
アヤト
……!
意を決して言った言葉にアヤトくんが目をまんまるにして驚く。
アヤト
アヤト
いーよ…
手、貸して?

少し照れたような顔で、わざと見せつけるように私の手の甲にキスを落とす。

私の目をじっと見つめながらーー。
恋花
恋花
あ……!
息を飲んだ。
まるで映画のワンシーンのようなキス。

彼の瞳から目が離せないーー

ボッと頬が熱を持ち、ドキンドキンと全身を揺らすほど心臓が動いてる。

そのまま彼は指を絡ませて、恋人繋ぎをした。
恋花
恋花
(手が、熱い…!)
まるで繋がった手のひらから、溶けてしまいそう。
アヤト
アヤト
ああー、
やっぱ我慢できない!!
恋花
恋花
ひえっ!?
グルンと視界が回って、ベッドの下に抱き枕が転がり落ちた。

私の両足の隙間に彼の太ももが割り込んで……。
アヤト
アヤト
俺、恋花が好き
さっきまでの可愛さが消えて今は男らしい顔。

それに、「僕」から「俺」に変わってる。
アヤト
アヤト
油断した? 俺だって男だよ

アヤトくんは小悪魔な笑顔を浮かべて、耳元で囁く。
アヤト
アヤト
ねえ、俺の事好きって言って?
アヤト
アヤト
…ほら。俺の唇にキス、して?

徐々に近づく彼の顔。

近すぎる……唇と唇がつきそうなキョリ。
恋花
恋花
……!

私は思わずぎゅっと目を閉じた。







ネコちゃんタイマー
ニャーン!!
3分たったニャーーーン!!
ゴロゴロニャーーーン!!
部屋に鳴り響くのは、ネコちゃんタイマーの音。




恋花
恋花
あれ……アヤトくん?

まるですべて夢だったかのように、彼は消えていた。

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