天気のいいカップ麺日和。
私は熱湯入りの水筒を持って公園にやってきた。
家族連れやカップルで賑わう芝生が広がる公園。
近くのベンチに座って『イケMEN!』を袋から取り出す。
そう、私は例のカップ麺の謎を追求するために自らにミッションを課した。
モクモク
モクモク
モクモク
モクモク
相変わらず大げさなほどの湯気が私を包み込んだ。
そして当たり前のように現れたのは、180㌢ほどの高身長爽やかイケメン。
Tシャツ、耳にイヤホンのスポーティなスタイル。
彼はつけていたイヤホンを外しながら、優しげな目を大きく見開いた。
キラキラと日の光で透ける髪に目を奪われる。
近くの家族連れはこちらを気にすることもなくフリスビーを楽しんでいる。
ぜっっっったいに気づく距離のはずなのに!
彼はぷくっと頬を膨らましたかと思えば、私の横に密着するように座った。
名前を呼ぶと嬉しそうに笑って、もっと構えと言いたげな顔でこちらを見つめる。
なんだかしっぽをブンブン振る大型犬みたい。
それに、健康的な肌と程よく鍛えられた身体に思わず目は釘付けになって……。
わずかに香る爽やかなシトラス系の匂いがドストライクで、顔に熱が集まっていく。
その時――
フリスビーが勢いよく私の顔面へと向かってくる。
ごっ!!
無意識に閉じた目を恐る恐る開けると、私を守るように抱きしめた彼が痛そうに頭を押さえていた。
ドクンと心臓が音を立てた。
ハルの目がすごく優しくて、改めて近すぎる距離にカラダが沸騰寸前だ。
男の子の声で彼はすっと私から離れた。
おかげでバクバクと忙しない心臓が平静を取り戻していく。
ハルの投げたフリスビーは綺麗な軌道で男の子の手元へと飛んでいった。
てっきり幻だと思っていたイケメンは、現実にここにいるらしい。
ぐるぐると混乱する思考を整理していると、真横から痛いほどの視線を感じる。
むちゅっ!
ハルはぐいっと私の手首を掴んで、今なお残る赤い跡を指先でなぞった。
ムッとした顔のハルは、どうやら今までのイケメンたちに猛烈に嫉妬してるらしい。
まるで大型ワンコがしょげてるように見える。
彼の可愛い嫉妬に、なんだか胸がむず痒い…!
ハルは気まずそうな顔でふいっと目をそらした。
私は必死に考えた。
イケメンはみんな等しく好きだ。
でもそれは本当の好きじゃないって最近思い知ったばかり。
徐々に自分の眉間にシワが寄っていくのがわかる。
グサリと図星を刺されて言葉に詰まる。
ガブッ!
キスマークの上にはクッキリと歯形が残っている。
そして少し寂しそうに笑ったハルは、目の前ですっと消えた。
公園の賑やかな声でやっと我に返る。
結局『イケMEN!』について何もつかめないまま。
虚しさを紛らわすように空っぽのカップを拾い上げたとき、誰かの声が聞こえた気がした。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!
転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。