第3話

無口なSP彼氏に守られました
7,326
2019/10/18 09:10
コンビニ店員さん
コンビニ店員さん
ありがとうございましたー!


買ってしまったーー。


陳列棚の奥の奥。
『イケMEN!』カップ麺を見つけた瞬間、もうカゴに入れていた。

恋花
恋花
(またアヤトくんに会えるのかな…?)
恋花
恋花
(そしたらお礼が言いたい!だってあんなにイケメンと喋れたのはアヤトくんが初めてだったから!)

るんるんで家への道を駆け抜ける。

玄関のドアを勢いよく開けて、制服も着替えず部屋へと直行!
恋花
恋花
ねこちゃんタイマーセット完了!!
お湯の準備も完璧!

カチッというお湯が沸いた幸せな音が部屋に響いた。



     モクモク
              モクモク


    モクモク 
              モクモク



          ボン!!

部屋中に充満した湯気の中に薄っすらと人影が見えた。

でもそれは明らかにガタイのいい人。
恋花
恋花
あれ、アヤトくんじゃない……?
??
??
……

目の前に現れたのは、スラリとした高身長にスーツを着こなすハーフっぽい男の人。

凛々しい眉に、くっきりとした二重。
それに固く結ばれた口元が男前。

そして私を見る瞳は鋭くて……。
恋花
恋花
え……だ、だだ誰ですか!?

思わず手が滑って、盛大にお湯をこぼしてしまう。
恋花
恋花
あつっ!!
??
??
……!!

ばしゃっ!!
勢いよく払い除けられた電気ケトルは床に転がった。

そして鼻先がぶつかりそうなキョリに彼の顔。
??
??
怪我は?
私を庇うように抱きしめる体勢に気づいて、ぼっと顔に熱が集まる。
恋花
恋花
だ、だ……(大丈夫です!!)
恋花
恋花
(ぅ、やっぱり声がでない!!)
??
??
……? 痛いのか?

無意識なのか少しヒリつく指先を掴んだと思えば、
ぺろりと舐められた。
恋花
恋花
ひぎゃあ!!
だ、だだだだ大丈夫です!!

ばびゅんと効果音が付きそうなくらい彼と距離をとって、頭の中を整理する。
恋花
恋花
(あれ? あ、あれ? アヤトくんじゃない! ……このイケメンは一体)

よく見るとスーツにトランシーバーをつけた妙なファッション。

どこかのドラマから飛び出して来たような、
まるでーーー
トウヤ
トウヤ
俺はトウヤ、お前のSP
そして彼氏だ
恋花
恋花
SP?!(やっぱり!)
恋花
恋花
(SPって、ボディーガードだよね…)


彼の姿に納得したその時、大きな揺れが私達を襲った。
トウヤ
トウヤ
……地震?

トウヤさんはすぐさまベランダの窓を数センチ開けた。

そして私を守るように覆いかぶさった。

グラグラと揺れ続ける間、彼は私を無言で守る。
恋花
恋花
(わわわ何この体勢!……ま、守ってくれてる?!)

彼の大きな身体にすっぽりと包みこまれて、心臓がどくどくと音を立てる。


トウヤ
トウヤ
……

しばらくして揺れが収まっても、なぜか彼は無言で私を離さない。
トウヤ
トウヤ
……
恋花
恋花
あれ…‥?あ、あの
トウヤ
トウヤ
……
恋花
恋花
ト、トウヤさん?
トウヤ
トウヤ
……なんだ

無口なのか、短い言葉で返してくるけどその場を動くつもりはないみたい。
恋花
恋花
あの……もう大丈夫です
守ってくれてありがとうございます!

上に覆いかぶさるイケメンに思い切って言葉を絞り出した。
トウヤ
トウヤ
いや、……お前の心臓の音が心地よくて
恋花
恋花
(へ! 心臓の音?!)
トウヤ
トウヤ
……あ、今すこし早くなった
恋花
恋花
(き、聞こえてるの?!)
恋花
恋花
恥ずかしいので、少し離れて下さい!!
トウヤ
トウヤ
それは無理だ
俺はお前のSPで、彼氏だからな
こうやって守るのが使命だ
恋花
恋花
なんですか、その暴論は!!
私、守る必要のないただのJKですよ!!
トウヤ
トウヤ
………!
恋花
恋花
へ!?

と、急にさっきよりも強く抱き寄せられ、至近距離の整った顔に息が詰まる。
ネコ
ニャオーーーン

ふと足にすり寄ってきたのは、近所のノラ猫、ボス太郎だった。

地震対策で彼が開けた窓から入り込んだみたい。
トウヤ
トウヤ
……なんだ、猫か

足元の猫を睨む目はすごく鋭い。
恋花
恋花
も、もしかして猫嫌いですか?
トウヤ
トウヤ
小動物は、俺が怖いらしい
恋花
恋花
大丈夫ですよ? ほら!

ずいっとボス太郎を彼に押し付けて、自然と距離をとることに成功。

トウヤさんは恐る恐る抱きかかえた。
トウヤ
トウヤ
……お前みたいに暖かいな

ふわりと微笑んだ彼の顔に釘付けになる。
恋花
恋花
笑った…

彼の頬が微かに赤く染まり、綺麗な二重の瞳が薄められる。

さっきまで固く結ばれていた唇は、思っていたよりも柔らかそうで……。

ふにっ



無意識に手が伸びていた。

唇に触れた指先が熱くなって、とっさに自分の手を引っ込める。
恋花
恋花
ご、ごめんなさい!!
つい!!出来心で!!
ネコ
ニャオッ!!

ボス太郎が私の声で驚いて、彼の腕から飛び降りて逃げていく。
トウヤ
トウヤ
……お、お前

トウヤさんの顔はトマトみたいに真っ赤だ。

その照れ顔に私の心臓がギュンギュンと音をたてる。
恋花
恋花
(て、照れてる?! か、かわっ!! まさかトウヤさんが照れるなんて!!)

頭の血管がショートしそうになったその時、無情にも猫ちゃんタイマーが鳴り響いた。
ネコちゃんタイマー
ニャーーーン!
3分たったニャーーーン!
ゴロゴロニャーーーン!!

またしても彼は跡形もなく消えた。


まだ指先に少しの熱を感じて、私はその場にヘタリと崩れ落ちた。


恋花
恋花
さ、触っちゃった……唇

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