第66話

全国大会 ー手当てー
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2018/10/24 11:11
楓side
イェ────イ!!

仁の掛け声で、ピューピューとか、おめでとう〜!とかって言う言葉が桜泉の観客席を包み込んだ。
仁
100m短距離走の選手の皆さん!予選突破、おめでとうございまーす!
楓
あ、ありがとうございます…?
凛
ありがとー!
龍
////ありがとう!
颯斗
颯斗
…どーも
凛
ったく、楓も宇根っちももっと喜んだらどうなのよ!
楓
いや、だってさ準決の時に決勝進出おめでとうーとか言われた方が嬉しくない?
龍
素直に喜べばいいんだよ!
というか、何故こんなことになっているのかというと、私が観客席  こ   こ  に戻ってきた時に丁度言われたのだ。

驚きと照れで素直に喜べません!!////
龍
つーか、楓。お前、怪我大丈夫なのか?
楓
へ?あー、大丈夫大丈夫!心配しないで…
凛
嘘よ
楓
((ギクッ
大丈夫と言ったのに、凛に鋭く突っ込まれてしまい、思わず肩がはねてしまった。
楓
…ど、どうしてそう言えるの?
凛
…紹介の時だって、スタートに並んだ時だって、ゴールした時だって全部足庇ってたでしょ?
楓
((ギクギクギクッ
痛い所を3回も疲れて私は一歩後ずさってしまった。
凛
…らしいから、風華!
風華
風華
はい!
いつの間にか救急箱を持った風華がスタンバイしていた。
楓
…なんで風華がここにいるの?
風華
風華
いちゃダメですか…?
ゔ…このウルウルした瞳に弱いんだよぉ、私は!
楓
ダ、ダメじゃないけど…なんで観客席に来てるのかなぁって…ほら!記録とか、さ
風華
風華
記録は、1年のマネ2人に任せました。ダメじゃないのであれば良いですよね?
すかさず真顔に戻った風華はサッと救急箱を開け、ガーゼタイプの絆創膏と消毒液と包帯を取り出した。

…あの瞳は嘘だったというのか!?
風華
風華
…ほら、そこに座ってください
楓
…はい…
私はもう、大人しく従うことにした。


そして風華は私のスパイクを脱がすと、包帯を取った。

すると…
風華
風華
…無茶はダメですよ。先輩
楓
…へ?
風華
風華
絆創膏が真っ赤に染まってます
凛
え!?
私が驚くより先に凛が私の前に回り込んだ。そして、私の足を見た途端顔が真っ青になった。
凛
ちょっと…!本当にこれ、気づかなかったの!?
龍
…これは…鈍感すぎにも程があるだろ…
龍も私の足を見て呆れる。

風華はスムーズに私の血で真っ赤に染まった絆創膏を、真新しい真っ白なガーゼタイプの絆創膏に取り替えてくれた。

ドジっ子だからこそ、こういう手当ては上手いんだよなぁ…
楓
…鈍感って別に…全員で、予選突破したかっただけだし…
凛
そういう所ぐらいは男らしくならなくて良いのよ?無理なら無理って、潔く諦める気持ちも大切よ?
凛が何か言ってくれているけど…
行きたかったものは行きたかったんだから…


と、その間に風華の手当てが終わった。
風華
風華
はい!これで終わりです。お昼過ぎにある準決勝、無理だけはしないでくださいね!
“でも…”と、風華が付け足す。
風華
風華
出来れば、今まで通りの…“かっこいい”伊藤先輩の姿が見たい…です
そう言いながらあのウルウルした瞳で見つめて来たら…抱きしめちゃうじゃないかぁ!
楓
…ああ…愛しの風華…!
風華
風華
ちょ…伊藤先輩!離して…////
身長が162cmの私より、10cm以上は低い風華。私の腕にすっぽりはまってジタバタしている姿も愛おしい…!

この子はどんだけ天使なんだ!
凛
…後輩ちゃんに負けてるよ。どうすんの?“独占欲強子”ちゃん?
龍
…後輩だから仕方ない。栗田がいい奴なのは皆が知ってることだから
凛
…なんじゃそりゃw
龍
…つーか、その呼び方ヤメろ
凛
別に正しいことだから良くない?“独占欲強子”ちゃん?
龍
…………
2人がそんな話をしていたことは、興奮していた私の耳には届いていなかった…

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