楓side
イェ────イ!!
仁の掛け声で、ピューピューとか、おめでとう〜!とかって言う言葉が桜泉の観客席を包み込んだ。
というか、何故こんなことになっているのかというと、私が観客席に戻ってきた時に丁度言われたのだ。
驚きと照れで素直に喜べません!!////
大丈夫と言ったのに、凛に鋭く突っ込まれてしまい、思わず肩がはねてしまった。
痛い所を3回も疲れて私は一歩後ずさってしまった。
いつの間にか救急箱を持った風華がスタンバイしていた。
ゔ…このウルウルした瞳に弱いんだよぉ、私は!
すかさず真顔に戻った風華はサッと救急箱を開け、ガーゼタイプの絆創膏と消毒液と包帯を取り出した。
…あの瞳は嘘だったというのか!?
私はもう、大人しく従うことにした。
そして風華は私のスパイクを脱がすと、包帯を取った。
すると…
私が驚くより先に凛が私の前に回り込んだ。そして、私の足を見た途端顔が真っ青になった。
龍も私の足を見て呆れる。
風華はスムーズに私の血で真っ赤に染まった絆創膏を、真新しい真っ白なガーゼタイプの絆創膏に取り替えてくれた。
ドジっ子だからこそ、こういう手当ては上手いんだよなぁ…
凛が何か言ってくれているけど…
行きたかったものは行きたかったんだから…
と、その間に風華の手当てが終わった。
“でも…”と、風華が付け足す。
そう言いながらあのウルウルした瞳で見つめて来たら…抱きしめちゃうじゃないかぁ!
身長が162cmの私より、10cm以上は低い風華。私の腕にすっぽりはまってジタバタしている姿も愛おしい…!
この子はどんだけ天使なんだ!
2人がそんな話をしていたことは、興奮していた私の耳には届いていなかった…
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!