私もこの2人と一緒に身を乗り出した。
スタンドのメインゾーンのコースに龍たち、第5組目の選手たちが並んだら、選手紹介のアナウンスが流れた。
紹介された選手は手を挙げて、観客の声援に応える。
龍の名前が呼ばれた瞬間、桜泉の陸上部がわぁぁっ!と、一気に盛り上がった。
私がそう言った途端、龍がパッと桜泉の観客席を見た…?のは気のせいだろうか…
山城兄弟がまた何か言っていたが…放っておこう。
その間にも、選手紹介は進んでいた。
やっほーと、藤原たちにも挨拶する棗兄。
棗兄の一言で私も試合に集中することにした。
────大丈夫…龍なら…きっと…
パァンッ!!
号砲と共に選手たちは一斉に走り出した。
龍はいつも通りのスタートダッシュを見せた。
力強い走りでグンと前に進み、トップを奪い取る。
桜泉の応援にも力が入る。
龍も後ろの人をぐんぐん引き離し────トップでフィニッシュ!!
ワァァァァァァッ!
桜泉の観客席が更に盛り上がった。
下にいる龍も私たちの方を見て、ガッツポーズをとりピースをしている。
そんな龍の姿を見て私たちは笑いあった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!