桜泉の観客席に戻ったら、藤原が号泣しながら出迎えてくれた。
さっきの凛みたいに、涙と鼻水で顔をグショグショに濡らしながら話すもんだから、本当に何言ってるかわかんない…(苦笑)
と、そんなことを思っているうちに、選手たちが入場してきた。
その瞬間、会場から大歓声があがった。
優月はそう言って、ニコリと笑った。
私はかなり気になったが…後で分かるなら、黙っておこう。
そして、選手紹介が始まった。
ワァァァァァァッ!
楠原高校初の決勝進出となった池田 太賀。そのおかげか、かなりの歓声が楠原の観客席からあがった。
その間にも、続々と選手紹介が行われていく。
ワァァァァァァッ!!
その名前がコールされた途端、桜泉の生徒たちは席を立って声を張り上げた。
決勝だから、私たちの応援にも熱が入る。
観客の声援に応えている龍の動きがちょっとぎこちない。
…それほど、緊張しているのだろう。
ワァァァァァァッ!
大城高校の横断幕が揺れに揺れまくった。
彼ら達にも熱が入っているのだろう。
…てか、それより…
これは、龍も負けるわけにはいかないな。
ワァァァァァァッ!
大歓声があがると同時に、私の体がピクリと動いた。
私と凛はアイコンタクトをとって話した。
ワァァァァァァッ!!
再び、桜泉の観客席から大歓声があがった。
龍の時と同じように応援する。
ってか、これも…
そんな話をしているうちに、次の選手の紹介が始まった。
ワァァァァァァァァッ!!
南月野のデカすぎる声援をよそに、私たち桜泉の生徒はあることに驚いていた。
優月はクスクス笑いながらそう言った。
運がいいにもほどがある…いや、悪いのか?
ワァァァァァァッ!
金本高の観客席から再び歓声がおこる。
松浦くんが“ワンツーフィニッシュは俺らがもらうんで”的なことを言っていたから、要注意だ。
私たちの鼓動がどんどん速くなっていく…
────お願い…私たちの敵を…とってきて…!!
いよいよ、始まる────
パァンッ!!
その合図とともに、選手たちが一斉に走り出した────!
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!