第62話

全国大会 ー心配だからー
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2018/10/21 07:01
楓side

宇根っちの予選が終わった直後のこと。
凛
っあ〰︎〰︎〰︎〰︎!
龍
惜しいなぁぁっ!
楓
0.02秒の差…予選から大接戦ね
金本高の観客席が異常な程に盛り上がるなか、招集場所にいた私たちは天を仰いだ。
風華
風華
高峰 新…決勝で見ていなさい…!宇根先輩か森田先輩がぶちのめしてくれるんだから!
ハムスター…ああ、失礼。ゴホン…えー、風華が高峰に向かって頰を膨らませながら、宣戦布告をした。

…向こうには届いていないだろうが。
龍
お、宇根っち帰ってきた!
龍の言葉で私は風華からスタンドの方へ視線を向けた。

帰ってきた宇根っちは……真っ黒なオーラを漂わせていた…
楓
う、宇根っち?お、お疲れ
颯斗
颯斗
…………おう
…あ、ダメだこれ。明らかに不機嫌だ。
凛
う、宇根っち、お疲れ!予選突破おめでとう!
龍
そう、凹むなって!決勝でぶちのめしてやれよ!
颯斗
颯斗
……ああ
凛と龍の言葉で宇根っちの真っ黒なオーラが更に濃さを増した…こりゃまるで、紅蓮の炎ならぬ、漆黒の炎だな…
楓
大丈夫だよ!宇根っち、後半の伸び最高だったじゃん!
風華
風華
そうですよ!高峰 新も驚いていると思いますよ!“桜泉の新星宇根 颯斗”って!
颯斗
颯斗
………うん
風華も一生懸命励まそうとしているが、全く聞いていなさそうだ…
龍
そう、くよくよすんなよ!心配するだろ?
楓
とりあえず、予選突破おめでと。午後の準決に向けて、一休みしておきなよ?
凛
そーだよ。決勝で高峰やつをぶっ潰すんだからね!
龍
そうそう!俺も決勝行くから、お互い頑張ろうな!
颯斗
颯斗
…おう、ありがとう
宇根っちはくしゃっと笑うと桜泉の観客席に向かった────が。









颯斗
颯斗
…おい、伊藤
楓
ん?行かないの?
颯斗
颯斗
…お前、足どうした?
楓
……あ
宇根っちの視線は、私の右足へと注がれていた。スパイクから微妙に、包帯が出ていたのだ。

私は思わず、右足を後ろに引きずらせた。
颯斗
颯斗
…何を隠そうとしている
楓
いや、別に隠そうとはしてないよ?ただ…
…何故だろう…ライバルのプライドからか、この先の言葉が出てこない。

宇根っちは何も言わない私から視線を外し、龍たちの方に視線を向けた。
颯斗
颯斗
…龍。こいつ…何があった?
龍
……紛失していたスパイクに、ピンバッチが仕込まれていた。悪意のあるものだと思われる
颯斗
颯斗
…!?
宇根っちは再び、私に鋭い視線を向けた。

私は思わず目を逸らしてしまった。
凛
…走るのに支障はないみたいだけど、痛みは出るみたい
楓
…私は大丈夫って言ったのに…風華が大袈裟すぎるのよ
風華
風華
だから、大袈裟なんかじゃありませんって!
…何を宇根っちこいつに言い訳してるんだろうか…
颯斗
颯斗
…だから、まだ龍がここにいたのか
龍
そ。真田てぃーちゃーに言われてね
楓
…試合に集中したいの。気にしなくていいよ
私がそう言うと、宇根っちはため息をついた。
すると────















颯斗
颯斗
……心配だから…無理すんなよ
そう言いながら、私の頭をポンッと撫でた。

そして、観客席へ戻っていった…
楓
……何だ…?今の…////
…珍しすぎる…宇根っちが人のことを心配するなんて…

不覚にもドキッとしてしまったじゃないか…

あんな…あんな、切なそうな顔を見せられたら…
龍
〰︎〰︎!?○×☆%¥#*っ!?
凛
…何言ってんの、龍
龍
…っ…さ、さ、さ…!!(触った…!!)
凛
…相変わらず、独占欲強子ちゃんですねぇ
凛と龍の中で、新たな疑惑が生まれた瞬間だった。

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