龍side
俺たちは前へ出てきた高峰を振り切り、見事ワンツーフィニッシュを決めたのだった。
ゴールした途端、会場から…特に、桜泉の観客席から嵐のような大歓声が巻き起こった。
俺はしばらく、何が起こったのか把握できなかった。
途切れ途切れに言う宇根っちの声を聞いて、俺は我に返った。
その瞬間、宇根っちとワンツーフィニッシュを成し遂げられたという実感が急に湧いてきた。
俺は優勝した宇根っちよりも興奮して、思わず抱きついてしまった。
抵抗する宇根っちの肩を強引に掴み、俺は桜泉の観客席の前へと走っていった。
すると、仲間たちは拍手で迎えてくれた。
俺はその拍手に答えるかのようにニカッと笑いながら、
とピースしながら叫んだ。
宇根っちはそんな俺を見て、僅かにため息をついた。
俺は仁の冗談に肯定しながら、宇根っちの肩をバンバン叩いた。
すると、凛の隣に座っていた楓がおもむろに立ち上がり…
と、天使のような笑顔で言うもんだから、俺の顔は真っ赤になってしまった。
照れ隠しで『いーえ!』と返しておいたが、バレてるかもな…(苦笑)
だが、次の瞬間、目の前にいた人たちの表情が一斉に固まった。
…って宇根っちが言っただけで、驚くか?普通に言ってるだけだろ?
みんながポカンとしているうちに、宇根っちは俺の腕を強引に掴み、真反対の方向へ歩き出してしまった。
え?え?…え??
何が起こったのかわからない俺は、事情をみんなに聞こうとしたがそれも叶わず、大人しく宇根っちに引っ張られていった。
俺たち2人は、喜びの余韻に浸ったまま、元いた場所へ歩いていったのだった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。