第93話

全国大会 ー喜びー
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2018/11/26 12:33
龍side

俺たちは前へ出てきた高峰を振り切り、見事ワンツーフィニッシュを決めたのだった。

ゴールした途端、会場から…特に、桜泉の観客席から嵐のような大歓声が巻き起こった。

俺はしばらく、何が起こったのか把握できなかった。
颯斗
颯斗
……龍…これって夢か…?
途切れ途切れに言う宇根っちの声を聞いて、俺は我に返った。

その瞬間、宇根っちとワンツーフィニッシュを成し遂げられたという実感が急に湧いてきた。
龍
…夢…じゃ、ねーよ…夢じゃねー…!夢なんかじゃないよ!夢じゃねーんだよっ!
颯斗
颯斗
…分かったから…そんな連呼するなっ…
龍
すげーよ!宇根っち優勝で俺が2位!本当にワンツーフィニッシュできちゃった!
俺は優勝した宇根っちよりも興奮して、思わず抱きついてしまった。
颯斗
颯斗
…っ!?バカッ離れろ…!
抵抗する宇根っちの肩を強引に掴み、俺は桜泉の観客席の前へと走っていった。

すると、仲間たちは拍手で迎えてくれた。

俺はその拍手に答えるかのようにニカッと笑いながら、

龍
とったー!ワンツーフィニッシュ!!
とピースしながら叫んだ。

宇根っちはそんな俺を見て、僅かにため息をついた。
凛
おめでとー!宇根っち、龍!
仁
優勝した宇根っちが喜ばなくてどーすんだよ!w
龍
そら、そうだ!
俺は仁の冗談に肯定しながら、宇根っちの肩をバンバン叩いた。

すると、凛の隣に座っていた楓がおもむろに立ち上がり…
楓
宇根っち!龍!敵とってくれて、ありがとう!!
と、天使のような笑顔で言うもんだから、俺の顔は真っ赤になってしまった。

照れ隠しで『いーえ!』と返しておいたが、バレてるかもな…(苦笑)

だが、次の瞬間、目の前にいた人たちの表情が一斉に固まった。

























颯斗
颯斗
……おう!
…って宇根っちが言っただけで、驚くか?普通に言ってるだけだろ?

みんながポカンとしているうちに、宇根っちは俺の腕を強引に掴み、真反対の方向へ歩き出してしまった。

え?え?…え??

何が起こったのかわからない俺は、事情をみんなに聞こうとしたがそれも叶わず、大人しく宇根っちに引っ張られていった。
龍
え?え?何があったんだ?
颯斗
颯斗
…さあな…俺がいつも通り返事しただけで、普通ああなるか?
龍
…宇根っちの満面の笑顔にやられたとか?
颯斗
颯斗
…気持ち悪い冗談を言うな…俺は小学校1年生以来、笑ったことがない
龍
そんなことあるか…薄笑いくらいはあるだろ…しょっちゅう見てるし…
颯斗
颯斗
…そうか?
龍
…ああ…でも…だったら、みんなの反応は一体何に対してだったんだろうな?
颯斗
颯斗
…知るか
俺たち2人は、喜びの余韻に浸ったまま、元いた場所へ歩いていったのだった。

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