第84話

全国大会 ー決戦の舞台へー
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2018/11/15 12:34
楓
…フゥ、間に合ったか
凛
あっぶな〜…
現在時刻15:38。なんとか招集時間が終わる2分前には着くことができた。(ちなみに招集時間は15:30〜15:40ね)

いつもだったら、招集時間の5分くらい前には着いておくんだけど…今は仕方がない…

…ところで。
楓
…やべえ、地味に痛い…
凛
本気で走るからでしょー!?
少し引いた痛みがまたぶり返してきたのだ。

ストレッチしているうちに治るといいんだけど…
龍
本当の本当の本当の本当に!大丈夫か?
楓
…本当が多すぎてよく分かんないけど…大丈夫
龍
俺ら向こうの方にいるから、何かあったら呼べよ?
楓
…この過保護親父め
龍
親父じゃない!!
龍と言い合っているうちに、少し痛みも引いてきた。
凛
独占欲強子ちゃーん…♡((ボソ
龍
…やめろ////!!
楓
…?
龍と凛も何か言い合っていたが…何も聞こえなかった。

特に大したことではないだろう。

凛と話していた龍が私の方を振り返った。
龍
…さ!そろそろ時間だ。お互い頑張ろう!
凛
もちろん!桜泉ーやるぞー!
楓
…うん、頑張ろ!
颯斗
颯斗
…健闘を祈る
私達は合図をすることなく自然とハイタッチを交わした。

そして男子2人は男子の招集場所へ向かった。

…ああ…なんか良いなこういうの…!仲間って感じがして…!
凛
…顔に出てますよー、楓さーん
楓
ふぎゃっ!?
凛
…猫みたいw
慣れてることなのに、唐突に言われると変な声が出るのも私のまた悪い癖…(汗)
凛
…そういえば、さっき誰かに突き飛ばされたとか言ってたよね?顔とか見てないの?
楓
突然のことだったから分かんないよ…見てたとしても、あそこ逆光で見えなかっただろうし…
凛
そっか…でも、ダンボールがあったのは奇跡だよねぇ…宇根っちもまさかあんなに必死になるとは思わなかったw
楓
…そんなになの?
凛
そりゃもう面白いほどにw
楓
……そう…
な、なんか心臓がむず痒くなってきた…


と、そんな話をしていたら…
???
桜泉エースさん、怪我しちゃったのかあ…つまんないの
楓
凛
!?
慌てて後ろを振り向くと、気の強そうな女子が立っていた。
楓
…三条…
琴音
琴音
覚えててくれたの?嬉しいなあ…
楓
対戦して負けたら覚えてるに決まってる。さっき、階段の前でも話したし
琴音
琴音
ああ、それもそうだね
琴音はニコニコしながらこちらに近づいてきた。

私は思わず後ずさりしてしまった。
琴音
琴音
逃げないでよー。怪我したって聞いて心配してるだけなのに…
楓
…心配ご無用。この足で勝ってやるから
琴音
琴音
…威勢がいいことで…それで400mリレー出ないとかなったら、ふざけんなって話だからね
琴音は最後にそれだけ言うと、踵を返して東高校のマネージャーの元へ行ってしまった。
凛
…牽制?
楓
…でしょうね
私は琴音のことは放っておいて、ウォーミングアップを始めようとしたら…
???
え!伊藤先輩、怪我しちゃったんですか!?
???
…怪我…ダメ……危ない…
楓
!?
何度これが続くんだろうな!

私と凛が後ろを向くと、敵同士なはずの光南高校の水上 由希と悠然高校の風間 由香里が立っていた。
由希
由希
つまんないですよー、先輩。戦い甲斐がないじゃないですか
由香里
由香里
…そう……楓…いなきゃ…つまらない…
楓
…と、ところで…敵同士の2人がどうして一緒にいるの?
由希
由希
あー…なんか意気投合しちゃってw
由香里
由香里
…由希……可愛い…好き…
そう言いながら由香里が由希をバックハグした。

女子では高い、170cmぐらいの由香里は腕の中に由希をすっぽりうめてしまった。

私と凛は思わずタジタジしてしまった。
由希
由希
まあ、そういうことなんで、よろしくお願いしまーす♪
由香里
由香里
…真剣…勝負……楽しみ…
一方的にそう言うと、2人は元いた場所は戻って行ってしまった。
凛
…なんか、私忘れられてない?
楓
……そーだね(苦笑)
凛
みんなバカにしちゃって…見てなさいよー…
凛はポソリと呟くと私の手をガシッと握った。
凛
楓!なんとしてもワンツーフィニッシュ狙おうね!!
楓
も、もちろんだよ!
凛の勢いにたじろいでしまったが、すぐに意識を集中させた。


…だが、私は密かに別のことを考えていた。

私に怪我を負わせた犯人のことだ。

龍が言っていたように、私が怪我をしたことでメリットがある人の可能性が高い。

…と言うことは、私と戦ったもしくは戦う選手…

今の所、怪しい人とは全員話した。

深く考えると全員が怪しく思えてきちゃうんだよなあ…


私がそんなことを考えている間にも、決勝の時間は刻々と迫っていた。


いよいよ、決戦の舞台が始まる────

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