私たちがウォーミングアップ場所に移動していた時のこと。
凛は鼻をゴシゴシこすりながら突如告げた。
私は聞き捨てならぬ言葉を察知し、慌てて凛の肩を掴んだ。
やっぱり、聞き間違いなんかじゃなかった!
私は、すっかり泣き止んだ凛に詰め寄った。
覚えてない人は『第82話:全国大会 ー覚えたんだー』をご覧ください!
…じゃなくって!!
私は怒りと恥ずかしさで、零れていた涙が全て引っ込んでしまった。
ああ…終わった…なんという屈辱…
思わず私は膝の力が抜けて、その場でうなだれてしまった。
そんな私を見て、凛はすぐさまからかってくる…
凛は口を尖らせて、ブーブー言った。
ようやく、凛の話にたどり着くことができた。
確かに、聞き覚えのある声だなとは思ったけど、宇根っちだとは思わなかった。
…いや、でも、そもそも宇根っちは私のこと楓って呼ばないし、んなことで叫ばないし…歌恋の時は違ったけど。
何より…
凛はそう言いながら、ニマニマ笑っていた。
…気色悪いほどに。
相変わらず、凛が考えていることはさっぱり分からん。ついでに言えば、あの叫んだ主もはっきりしたい。
私はモヤモヤした気持ちを抱えながら、ウォーミングアップ場所へと戻った。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。