龍side
俺が練習に向かう数分前──
楓たちと一緒に向かおうと思っていたのだが、いつの間にか先に向かってしまっていたようだ。
気づいている人もいるかもしれないが……俺は楓に恋をしている。
幼馴染みということもあって小さい頃はずっと一緒に過ごしていた。
高校生になった今でもたまに遊んだりもしているのだ。
俺の気持ちに気づいているのは凛、ただ1人。
誰にも話す気は無かったのに、ちょっとした事故で知られてしまったのだ。
……まあ、たまに相談にのってくれるからありがたいとは思っているのだが…
宇根が声をかけてきた。
…なんだかひねくれたような感じで返してしまった。
宇根は不満そうな顔をしていたがすぐに元に戻った。
宇根は俺の意見も聞かずに勝手に決めてしまった。
……別に構わないのだが…
俺が慌ててついていくと…
宇根がいきなり質問してきた。
よりによって…楓の話だ。
俺は慌ててごまかしたが…
あっさりとバレてしまった。
今まで誰にもバレなかったのに…!(あ、凛以外な)
なんでバレるんだよぉ〜!!
俺は口に出していないはずなのに、心で思っていたことに答えてくれていた。
また笑われてしまった。
…いや、楓と同じならものすごく嬉しいのだが…って!
宇根に思いっきり睨まれた…かと思ったが、
そう言ってニヤリと笑った。
俺は奴を睨んだ。
そう宣言すると宇根は、
そう言って階段を降りていった。
奴は楓のことが好きなのか…?
いやまさか…まだ出会ってちょっとしか経ってないぞ?
俺はそんなことを思いながら慌てて宇根を追いかけた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。