第98話

全国大会 ー頼んだよー
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2018/12/19 11:44
裏で律たちがそんな話をしていた頃。

楓たちの方では、400mリレーに出場する選手たちが着々と準備をしていた。
凛
そんじゃ、いってきます!
優月
優月
悠然高校が一緒だったわよね。…ぶちのめしてくるわ
芹奈
芹奈
おっかない言葉使わないでくださいよ、綿谷先輩…
雅
…まあ、楓のぶんまで頑張ってくるしかないわよね
龍
頑張れよ、お前ーら!
雅
うん♡頑張る♡
楓
(……おい)
雅の性格の変わりように、冷や汗をかきつつ、私はメインスタンドへ向かおうとする女子たちを見つめる。

4人も足を止めて、私を見てくれた。
楓
…勝ってきてね
凛
当たり前よ!楓も明日までに治してよ?
楓
…もちろん
芹奈
芹奈
大丈夫です!伊藤先輩のぶんまで頑張ってきますから!
楓
…もう、何回も聞いた(苦笑)
芹奈は何度も言ってくれた言葉をもう一度告げ、トンッと胸を叩いた。
雅
…楓は大人しく見てなさいよ。さっさと治して、明日は絶対に勝つんだから
おや、珍しい。雅がそんなことを言うなんて。

私はニマッと口角を上げ、からかい半分で雅を茶化した。
楓
へーえ。雅も心配してくれるんだ〜
雅
…バカね。そんなわけないでしょう。エースが出て優勝すれば、殿方たちのウケもいいの
楓
あ、そう…
雅はフンッと、そっぽを向いてしまったが、その耳は薄っすらと赤く染まっていた。

…へへっ。可愛い奴めw
仁
…おい、女子の皆さん。そろそろ時間だぞ
5人で笑いあっていたら、藤原が腕時計を見ながら、そう告げた。
凛
1組目ってやだよね〜
龍
俺らは3組目だからwお前らの試合見てから降りるわ
凛
うわ、嫌味かよ。サイテー
龍
うっせーな
楓
はいはい、そこまで。本当に時間なくなっちゃうから
いつもの痴話喧嘩がエスカレートしてしまいそうだったから、私は慌てて仲裁に入った。
楓
…凛。頼んだよ
喧嘩を止められてふてくされている凛に向かって、私はそう呟いた。

凛は目をパチパチ瞬かせると、
凛
うん!任せな!
私たちは自然と手を差し出し、パンッとハイタッチをした。
じゃーねー!と言いながら、4人はメインスタンドへ降りていった。
私はその4人の背中を見送ると、フゥと息を吐き、ストンと席に着いた。

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