第77話

全国大会 ー100m短距離走準決勝④ー
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2018/11/10 13:54
アナウンス
男子100m競走、準決勝第3組目を開始いたします
いよいよ、男子たちの運命が決まる、男子100m短距離走準決勝、第3組目の時間がやってきた。
棗
注目選手は、大城高校の更家 慎吾…金本高校の松浦 哲平…か
楓
…その中に、当っ然龍も入ってるよね?
棗
ああ、もちろんだよ
棗兄がにこやかに笑った。
凛
随分と詳しいんですね…
棗
予選ですでに注目されてた選手だからね〜。強豪校ってこともあるけど
凛
さすが兄妹!似てるね〜
楓
…んなこと言われても嬉しくないんだけど
凛がニヤニヤ…いや、ニコニコしながら私の方を向いた時。丁度選手紹介が始まった。
アナウンス
出場者をご紹介します。第1レーン、相葉 翔太くん。隅栄高校
ワァァァァッ!


男子最後の100m準決勝ということで、応援にも力が入る。
アナウンス
第2レーン、岡田 智くん。陽塚高校






アナウンス
第4レーン、更家 慎吾くん。大城高校
ワァァァァァァッ!
その途端、大城高校の観客席が一斉に湧いた。

これで更家が勝ち上がったら、100m短距離走だけで3人の選手が決勝へ行くことになる。

ま、それでも桜泉もすでに3人が決勝進出決めてるけどね!
凛
…なーにニヤニヤ笑ってんのよ
楓
んー?なんか誇らしくなっちゃって
凛
…はあ?
凛が不満げな顔をするが、アナウンスによって遮られてしまった。
アナウンス
第5レーン、松浦 哲平くん。金本高校
ワァァァァァァッ!
金本高からも負けず劣らずの歓声があがった。
楓
…金本高っていったら高峰 新がいるじゃん
凛
…げ、そうじゃん
楓
油断も隙もありゃしない…
私が再び視線をスタンドへ戻すと、龍の紹介が始まった。
アナウンス
第6レーン、森田 龍くん。桜泉高校
ワァァァァァァッ!!
桜泉からも、前の2校の声援に負けないほどの大歓声が巻き起こった。
仁
龍────!お前ならできるぞぉ!!
優月
優月
叩きのめせぇ!森田ぁー!!
凛
ぶっ潰せぇー!龍────!
楓
負けたら承知しないよー!!
棗
…女子はなんて応援をしているんだ…
楓
龍が勝ったら、桜泉の100m選手全員が決勝進出確定なんだから!そりゃ気合が入るよ!
その頃、龍にはこの応援が届いていたのか、観客に手を振りながら身震いをしていたのだった。
アナウンス
第8レーン、内海 広樹くん。以上、8名の出場です
紹介が終わると、選手たちはスタートラインに並んだ。


会場が一気に静かになる────















スターター
On your marks────
スターター
Set────




パァンッ!!
力強い号砲が会場に鳴り響いた。

選手たちが飛び出したと同時に会場全体も盛り上がった。

まず、スタートダッシュに成功したのは更家と松浦の2人。トップ争いを繰り広げる。

少し遅れて龍が走る。

私はそこである違和感に気づいた。


……なんか、いつもの龍じゃない…?


なんというか…落ち着きがないというか、動揺しているというか…とにかく走りに焦りが見える。

その隙に、更家と松浦がリードを取り、後半にかけて加速をつける。

龍も少しずつ差を縮めるが────2人には追いつけなかった。

最終的に、更家が一歩先に出てそのままフィニッシュ!!

続いて2位に松浦、そして3位に龍が入った。


桜泉の生徒に動揺が走った。
凛
…ヤバイ…これはヤバイ…
楓
…3位になると…他の人との賭けになるな…
優月
優月
全部の準決勝を見た限りは、大丈夫だと思うけど…
仁
結果を待つしかないな…
当の本人も、髪をくしゃっと握り、しばらくゴールラインに立ち尽くしていたのだった。

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