第99話

全国大会 ー不満ー
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2019/03/09 05:08
龍
…大丈夫か?
楓
…ふぇっ?
龍がいきなり私の顔を覗き込んできたもんだから、思わず変な声が出てしまった。
楓
…なっ、何よ、急にっ!
龍
いや?ただ、心ここに在らずって感じだったから、準決勝出れなかったの相当悔しかったのかなって
…そこを突くんじゃねーよ、馬鹿野郎。悔しいに決まってんじゃないか。

────そりゃ…だって…ねぇ……誰かも分からない奴に怪我を負わされて?こんな卑怯な手を使われて、私の夢をぶち壊して?

…誰でも、悔しいと思うよ。絶対。

…でも…抗議したところで、起こったことはもう元に戻らないし、特にメリットもない。

…だから、煮えたぎるこの思いを、腹の奥の奥の底に押し込めて…明るく見送って、仲間のことを信じるしかないんだよ…!



放っておいてよ!

それぐらい気づいてよ!


……こんな気持ちに…させないでよ…

我慢してたのに…龍のせいで感情が爆発しそうだよ…
私がしばらくの間口を閉ざしていると、おもむろに龍が口を開いた。
龍
…あー…なんか、ごめんな
楓
…は?
突然、謝ってきて…何がしたいんだこの男。

私は冷たい目で龍を見つめた。
楓
何がごめんなの
龍
…いや…なんか……楓が怒ってそうな感じがしたから…俺が言ったことで、不愉快な気持ちにさせたんだったら…ごめん
楓
え、嘘。顔に出てた?
龍
…自分の性格、自覚してます?
楓
…あー、そうだったね。ごめんごめんw
私は可笑しさから、思わず気が緩んでくしゃっと笑ってしまった。
颯斗
颯斗
…まあ、犯人も犯人だよな
楓
…宇根っち
私と龍の間に宇根っちが割って入り込んできた。
龍
どうした、宇根っち
颯斗
颯斗
…こんな卑怯な手を使ってまで伊藤を陥れたいのは…相当恨みが溜まってんだよなあ…って思って
楓
…そうなんだけど…私、何かしたかなあ…
3人でウンウン唸っていると…
???
でもそれってさあ、自業自得でもあるんじゃないの?
楓
っ!?
後ろから、聞き覚えのあるおっとりした声が聞こえてきた。
嫌な予感を感じながら、勢いよく振り返ると…予想通りの男が立っていた。
楓
…律、さん
律
やあ。数分ぶりだね
観客席の手すりに寄りかかりながら、律さんがヒラヒラッと手を振っていた。

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