第60話

全国大会 ー捜査開始ー
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2018/10/19 14:12
風華
風華
…とりあえず、応急処置はしておきました!
風華に手当てされた私の右足は、大きめの絆創膏を貼られ包帯でぐるぐる巻かれていた。
楓
包帯なんて…大袈裟だよ、風華
風華
風華
いえ!大袈裟なんかじゃありません!先輩はこれから大本命の100mに出場されるんですからこれくらい当たり前です!歩くのもちょっと痛いんでしょう?
楓
…微妙だけど…でもねぇ
風華
風華
私は、少しでも伊藤先輩のお手伝いをしたいんですっ!!
楓
…ゔ……
ああ…もう!何なんだろうな、このピュアすぎる小動物は!
クリックリの瞳で見つめてきやがって…!
言いたいことも言えなくさせるんだよ!

私が1人で悶々もんもんもだえていると…
真田先生
ところで、伊藤。その怪我、一体どうしたんだ?
風華
風華
あ、そうですよ。まるで画鋲で刺したみたいな傷口でしたけどこの辺に画鋲なんて落ちているはずありませんし…
真田先生たちがそう尋ねてきた。
楓
あー…それが、スパイクの中にピンバッチが仕込まれていたみたいで…
真田先生
はあ?
風華
風華
えぇ!?
私が少したじろぎながら事を伝えると、2人にはとても驚かれた。
真田先生
いたずらで仕込まれたというのか?それにしても、いつ仕込まれたというんだ?
凛
それが、楓のスパイクが昨日の帰りから紛失していて、今日の朝突然見つかったんです
龍
それも、昨日から何度も探していた俺らの観客席のところに落ちていたらしいんです
真田先生
何だそれ…姿を見せないとは卑怯な奴だな
凛
やっぱり、いたずらか何かですかね?
真田先生
いや…こりゃ、もしかすると意図的に仕込まれたものかもしれないぞ
凛、龍
えぇ!?
真田先生の爆弾発言に私たちは驚いた。
楓
何でそうなるんですか…?
真田先生
そりゃだって、そのスパイクは伊藤が目を離したすきに無くなっていたんだろ?
楓
はい
真田先生
そして、いつの間にかご丁寧に返されていたと…この時点で計画性があるものだと疑えないか?だって、確実に伊藤のスパイクを狙っていたって事だろう?
楓
…そう、ですね…
龍
…お見事です。先生
真田先生
ハッハッハー!もっと褒めてもらっても構わないぞ!
…うわ、折角いいところ見せたのにでもったいない。
凛
もしも、先生の言う通りだったとしたら…問題は、誰が犯人って事じゃない?
龍
…ああ。そうだな
風華
風華
伊藤先輩が怪我をする事で、メリットが生まれる人物になりますよね?
楓
まあ、そうよね…
私たちはうーんと唸った。

と、そこで龍が切り出した。
龍
じゃあ、今回の大会のライバル校…とか?
楓
…やっぱりそれが一番有力的?
凛
そうとなると…昨日私たちの近くに座っていた高校が怪しくなってくるわね
龍
もしくは、帰り際に桜泉の後ろの通路を通った高校…とか?
楓
それじゃあもっと難しくなってくるじゃん…
風華
風華
怪しい人物を探すというのは?
楓、凛、龍
あんま、覚えてない…
ぴったり揃った私たち3人の言葉に先生と風華は思わず、ズコーっと、ずっこっけた。
龍
印象的に残っているのは、うるさすぎる高校生とか、真っ黒なスーツを身にまとった警備らしき人とか…
凛
そんなのが怪しいとは言い切れないよね…
私たちが再びうーんと唸っていると、
真田先生
まあ、この件は置いておいて、七瀬と伊藤は試合に集中しなさい。幸い、伊藤の予選は強豪校がいないし…森田はしばらく伊藤に付き添っていてくれないか?
龍
もちろんです
楓、凛
…分かりました
一応、先生の話は聞くけれど、私の心は不安でいっぱいで、それどころじゃなかった。
────またこんなことがあったら、たまったもんじゃない…
私は、周りを警戒しながら、無理をしない程度にウォーミングアップを始めた。

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