100mの準決勝が終わってから、約1時間が経った。
いよいよ、運命の100m短距離走決勝の時間がきたのだ。
あと10分くらいで女子の招集時間が始まる。
凛はさっきから、落ち着かずに立ったり座ったりを繰り返している。
龍はすぐに態度を一変させて深々と頭を下げてきた。
なぜ龍があんなにも動揺していたかと言うと、男子たちの話によれば、高峰が強豪校である龍たちに宣戦布告をぶっかけてきたらしい。
バカにされたとか何とかで、少し揉めていたとか…
それで焦った龍は動揺を隠せなかった…というのが理由だそうだ。
龍はふざけて泣き真似をしてきた。
私は嫌がる凛の腕を引っ張りながら、仲間たちに笑顔を向けた。
相変わらず、萌のメンクイさにはやられるが…放っておこう!
私たちは声を揃えて、藤原や優月、棗兄や後輩たちのエールに答えるように告げた。
この時の私はまだ知らない。
再び、悪魔の手が忍び寄っていることを。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。