キーンコーンカーンコーン…
1時間目の授業が終わった。
その瞬間────
宇根っちのところに一気に人が集まった。
隣の席の私にもいい迷惑だよ…
…ってことはおいておいて。
…質問攻めで宇根っちが少し可哀想に思えてきた…
私も口を開こうとしたら────
…なんということだ…これじゃあ幾ら何でも歌恋が可哀想だ。
──その時だった。
いつの間にか教室の入り口に歌恋が立っていた。
そして切なく呟いたのである。
宇根っちは席を立ち、歌恋の目の前まで進んでいった。
宇根っちがそう言うと、歌恋は更に縮こまった。
歌恋が発したある言葉に宇根っちは反応した。
窓際に座っている私と凛はこっそり会話していた。
そして再び宇根っち達の方に視線を向けた。
宇根っちは何かを必死に思い出しているようだった。
そして────
歌恋が宇根っちに抱きついた。
その途端、女子達の目が鋭くなる…(苦笑)
気の強い女子達が宇根っちに詰め寄る。
宇根っちは困ったようにこちらを向くと、
再び私達は絶叫した。
しかし歌恋は宇根っちのその言葉を反論するかのようにキッと勝気な目でこちらを向いた。
龍が宇根っちに詰め寄ると、宇根っちは観念したかのようにため息をつき話し始めた。
だがしかし────
キーンコーンカーンコーン…
2時間目開始のチャイムが鳴ってしまった。
みんな慌てて席に着く。
余談だが…龍はこういう話が大好きだ…だから、こんなにも食いついてしまう。
そして、また次の休み時間にまで話が伸びてしまいそうだった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!