第67話

全国大会 ー捜査会議ー
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2018/10/26 12:47
龍
…にしても、だ
突如、龍が話しだした。
凛
ん?何の話?
龍
…犯人だよ。楓をこんな目に遭わせた奴。一体、どこのどいつなんだろうな…
楓
いや〜、別に気にしなくてもいいからね?
私は軽く流した。

怪我させられようが、何だろうが、私は優勝を掴み取る!それだけなんだから!
楓
そもそも、私の不注意で怪我したんだし。ちゃんと確認してから履けばよかったんだからさ
颯斗
颯斗
…それもそうだな
龍
まあ、そうなんだけど…
凛
そうよね、不注意よね…
楓
…ちょい待ちぃや。そんな言われると傷つくんですけど…
思わぬみんなの反応に、私は肩透かしを食った。
龍
でも、犯人は見つける!絶対に…!
楓
それは、どーも…
そこから、『伊藤 楓スパイク盗難事件及び過失傷害事件』と、何とも大袈裟な長ったらしい名前がついた事件の犯人探しが始まった。
楓
過失傷害って…こんなの単なる嫌がらせじゃん…
風華
風華
そんなことありませんよ!伊藤先輩に怪我をさせた上、予選を敗退させようとした、悪い奴なんですから!
…ダメだこりゃ…後輩までノリノリだよ…
凛
それでは捜査会議を始めます。誰か情報を持っている捜査員はいますか
楓
ちょっと、凛…ふざけんのもほどほどに…
凛
被害者は黙っていてください!
ピシャリと言われて私は言い返そうにも言い返せなくなった。
龍
はい!俺、有力な情報を持ってます!
凛
何ですか、森田捜査員!
龍
前も言ったと思うのですが、盗んだと思われるのは被害者に恨みがある人物だと思われます!スパイクが盗まれた当初、桜泉の観客席のそばには学生や警備を担当している人がいました
凛
それで?
龍
その時、大城高校の生徒がいました。大城高校といえば、去年2年生ながらも100mを制した仙波 怜がいます
凛
ああ…私と戦った人か
龍
彼女は、その実力と美貌から
“大城高校のプリンス”と呼ばれています。絶対的なプライドがあったのではないでしょうか
凛
なるほど…決勝に行くと思われる、被害者を予選で潰しておきたかったと…ふむふむ……でもさぁ…
そこで凛の口調と態度が一気に変わった。
凛
…楓が強いのは私だって十分知ってる…でもさ…自分の予選で当たる同じ高校の“私”を潰さなくても良かったのかなぁ…?
龍
…それは…潰しておく必要があったと思います…
なぜだか龍が半ば押されている…
凛
…ふざけんじゃねぇって話だよなぁ…?そうでしょ…?森田捜査員……
龍
…はぃ…その通りだと思います…
宇根っちと同じような漆黒のオーラを漂わせる凛。
そんな凛を見て蹴落とされている龍。
そんな2人を呆れて見ていたら宇根っちが話しかけてきた。
颯斗
颯斗
…おい、伊藤…ちょっといいか
楓
ん?何?
颯斗
颯斗
…龍がさっき言ってた学生や警備を担当している人って…どんな人たちだった?
楓
…私が見たわけじゃないけど、うるさい学生たちと黒スーツの警備の人だったとか…
颯斗
颯斗
…そうか…サンキュ
宇根っちはそう言うなり、俯いてしまった。

相変わらず、何を考えているか全くわからない。
私は不思議に思いながらも、漆黒のオーラを纏い続ける凛をなだめることにした。

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