第86話

全国大会 ー100m短距離走決勝②ー
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2018/11/18 04:22
パァンッ!!


────力強い号砲とともに、選手たちが一斉に駆け出した!

その途端、会場のボルテージが最高潮に達した。
仁
桜泉────!ファイトォ!!
優月
優月
りーん!楓ー!行け──!!
まずスタートダッシュに成功したのは仙波姉。一気に前へと進み出る。
…さすが、去年の女子100m短距離走覇者だ…

続いて、三条、七瀬、大野が仙波姉のすぐ後ろにつけた。

伊藤も4人のすぐ後ろにつく。

いつでも追い越せそうな位置だ。
すぐにでも前に出れそうだけど…

他の3人もいつでも追い越せそうだ。

…この接戦、誰がいつ仕掛けるか…楽しみだ…
…………………………


楓side

くそっ…出遅れた!

私は今、怜、琴音、凛、雫の後につけている。

いつでも抜かせそうだけど…ここで仕掛けたら、確実に誰かにまた抜かれる。

くっ…!地味に足が痛いし…思った以上に加速をつけられない…!!

痛くてスタートダッシュ上手くいかなかったし…!

でも…でも…!ここで負けるわけにはいかないんだ…!!!!

私は自分の力を最大限に振り絞り、漆黒のオーラを身にまといながら、自分の得意所である後半戦に突入した────
…………………………


凛side

あー!やっぱり、怜は強いんだよな!!

今、私は怜のすぐ後ろを走っている。

隣に三条もいるから、一気に加速をつけたいけど〰︎〰︎〰︎〰︎!出来ないんだよ〰︎〰︎〰︎〰︎!

楓は私たちの後ろにいるから、いつでも抜ける状態だけど…やっぱり、痛そうにしてる。

…でも、ワンツーフィニッシュは諦めないよ!!

楓も漆黒のオーラを漂い始めたし…(苦笑)

負ける気はなさそうだ。

さぁ…桜泉のショータイム、始めるよ!!
…………………………


仁side

いよいよ、後半戦に突入した。

伊藤はもちろん、七瀬も後半の方が得意っちゃ得意。


…と、ここで、レースが動いた!

とうとう、七瀬が仕掛けたのだ!

七瀬は仕掛けるのがうまい。

一気に仙波姉に詰め寄り…抜いた!!




ワァァァァァァッ!!

その瞬間の桜泉の大歓声は凄まじいものだった。

だが、仙波姉もそこに食らいつき、抜きつ抜かれつを繰り返す。

しかし、そこで────








ワァァァァァァッ!!














────伊藤がトップに躍り出たのだ!
仁
いいぞ!伊藤────!!
優月
優月
行けー!楓────!
怪我なんて嘘じゃないかというような走りを見せる。

仙波姉は不意をつかれたみたいで、一瞬スピードを緩めたが、すぐに集中しなおし、伊藤を抜かそうとする。

そこに七瀬も食らいつき、優勝争いは伊藤、七瀬、仙波姉の3人に絞られた。

だが、伊藤にも限界がきているようだ。

少しずつ、少しずつ仙波姉に迫られている。

七瀬も仙波姉に詰め寄る。




その時────




















『楓!負けんなっ!!』




















聞き覚えのある声で誰かが叫んだ。


俺らがその声に驚いているうちに、トップでフィニッシュしたのは────
















ワァァァァァァッ!!






























誰だ!ってくらい、3人同時にフィニッシュした!!


これは…写真判定だ。
仁
おいおいおいおい…
棗
うーん…これはやばいなぁ
優月
優月
ワンツーフィニッシュしてますかね?
棗
…分かんないね、これは
トップのタイムは11秒76となっている。

相当速いタイムだ。

もしも桜泉の2人のどっちかが、トップに入っていれば自己ベスト更新となる。






スクリーンに映像が映し出された。

観客たちは一斉にそちらを見る。


大城高校と桜泉高校の生徒たちは手を合わせ、祈るようにスクリーンを見つめる。





果たして結果は────?





スクリーンに映っていたのは────


































ギリギリで仙波姉のトルソーが1番で滑り込んでいる姿だった。



ワァァァァァァッ!



その瞬間、大城高校の生徒たちが会場を震わすほどの大歓声をあげた。


惜しくも、伊藤が2位で七瀬が3位だった。

スタンドにいる仙波姉は輝くほどの笑顔を浮かべ、ガッツポーズをして大城高校の観客席の前へ走っていった。

落ち込む伊藤に七瀬は肩を叩き、励ましていた。

心なしか、その瞳は潤んでいるように見える。

伊藤も腕で顔を隠している。







伊藤と七瀬が1番力を注いでいた100m短距離走は、仙波 怜が二連覇を果たし、幕を閉じたのだった────

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