プリ小説

第11話

〈第三章〉
私が本気で美術の道を志そうと思ったのは、中3の時。
子供の頃から手先が器用で、絵を描いたり物を作ったりするのが好きだった。
夏休みの宿題は嫌いだったけど、自由研究や絵画だけは毎年市から何らかの賞をもらうぐらいの得意分野だった。
中学に上がって、特別やりたいこともなかったから消去法で美術部に入部して。
そこでも色んな作品展で、結構賞とかもらえてた。
顧問の先生に、本気で美術の道に進んでみたらどうかと言われて綾城を薦められたのは中2の時。
でもその頃の私は、みんなでワイワイ騒ぎながら遊び半分で描いてるのが楽しかったから、美術の道に進むということがあまりピンとこなくて、結局ギリギリまで進路に迷っていた。
転機は、中3の時に行った中学校美術展。
自分たちの作品が出展されていたから、美術部全員で鑑賞会に行ったその美術展で、私はある一枚の絵に釘づけになってしまった。
それは、ブルーが印象的な、不思議な絵だった。
壁一面を覆うほどのキャンバスの中には、宇宙のような大きな湖が描かれていた。
その湖に、恐竜の化石が水を飲むように口を付けていて、宇宙に大きな波紋が広がっている。
生命を感じさせるような大きな樹があるかと思えば、湖の底には対照的に近代的なビル群が沈んでいたり。
何より私の目を引いたのは、独特な青の使い方だった。
グラデーションともまた違う、オリジナリティのある濃淡のつけ方。
それが宇宙の深みだったり、湖の清さだったりをすごく味わい深く表している。
とても不思議な世界観で、それでいて強烈に、鮮烈に、心に訴えかけてくるような──。
そんな絵だった。
おそらくゆうに5分ぐらいは、その絵に見入っていたと思う。
友達に促されて我に返った私は、慌ててその絵の作者のネームプレートに目を走らせた。
《 金賞 綾城学園中等科 美術部3年一同 》
それを見て体中に、電気が走ったみたいだった。
綾城に行けって……美術の道に進めって、この絵に背中を押されたような気持ちになった。
こんな絵を描いてみたい。
こんな風に、誰かの心に響く絵を私も描いてみたい。
今まで感じたことのない、絵に対する情熱みたいなものが、これをきっかけにムクムクと湧き上がってきて。
うだうだと長いこと迷っていたのが噓みたいに、私は綾城進学を決意したのだった。

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角川ビーンズ文庫
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