第3話

〈第一章〉
3,092
2018/12/17 05:09
桜沢千代
桜沢千代
そろそろ綾城祭の絵、本気で取りかからなきゃだねぇ……
真っ白なスケッチブックを前に、私達三人は同時にハァッと大きなため息をついた。
小林芽衣
小林芽衣
佐々木は何描くか決めた?
佐々木拓斗
佐々木拓斗
んー。今年は抽象画、挑戦してみようかなー、と
小林芽衣
小林芽衣
うわ、マジ? 評価されにくいのに、チャレンジャーだねー
佐々木拓斗
佐々木拓斗
そういう小林は決まってんのかよ
小林芽衣
小林芽衣
油絵ってことだけは決めてる
クラスメートで友人の小林 芽衣と、佐々木 拓斗の会話をじっと黙って聞いていた私だったけど、一向にこっちに話題が振られないので、会話が途切れたタイミングを見計らって思わずグイッと前のめりに身を乗り出した。
桜沢千代
桜沢千代
ちょっと、なんで私には聞いてくんないのよ
軽く二人をにらみながら言うと、二人はゆっくりと目を見合わせた後で同時に小さく肩をすくめた。
小林芽衣
小林芽衣
だって、聞かなくてもわかってるし
佐々木拓斗
佐々木拓斗
どうせ、あれだろ
そして二人はまるで示し合わせたように声を合わせた。
「王子様の手」
「…………」
二人の言葉には完全にからかうような色が込められていて、カチンときた私はムゥッと唇をとがらせた。

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