そんなある日悲劇はやってきた。
私が6歳の誕生日に
お兄ちゃんが誕生日プレゼントをくれた。
オシャレな服やお菓子、
手紙まで貰ってすごく嬉しかった。
その日は小学校の入学式もあって
新しい制服を着てピカピカのランドセルも背負って
学校へと向かった。
入学式が終わって家に帰る道の横断歩道で
黄色い帽子を落としてしまった。
それを拾おうとした時
右側から何か大きい音と共に大きい車が
猛スピードで走ってきた。
私は身動きもできず立ち止まっていた。
すると、お兄ちゃんが私を外側へとはじき飛ばした。
私は何があったのかわからなかった。
でも、後ろを見たらすぐにわかった。
お兄ちゃんは自分を犠牲にして
私を守ってくれたんだって。
そこにはお兄ちゃんの姿はなかったけど
赤い何かが道路に染まっていた。
もう1人のお兄ちゃんが私を抱き抱えて泣いていた。
「お兄ちゃん、どうして泣いてるの?」
「お兄ちゃんはあの車の奥にいるよ?」
そう言ったけど、お兄ちゃんは
振り返ることなくまっすぐ前を向いていた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!