外の世界にいるため妖夢も私もそこそこ弱体化している
とはいえかなりの苦戦を強いられたことからやはり強者であることは間違いないだろう。
二人分の走ってくる音が聞こえそちらの方へと顔を向けると先程の人間2人が、少し焦った様子で話しかけてきた
ビシビシと妖夢から何か言いたげな視線が突き刺さる。
厳しい視線を向けられる自覚はある
認識阻害の結界をあの人間二人にかけたことに気づかれてしまっていたようだ。
戦っている最中に相手の強さを上方修正したためこの人間二人では実力不足と判断し彼らが呪霊から離れた隙に自分たちの周囲に結界を貼ったのだ
彼らは気づいていないようだけれどオレンジ色の髪色の少年の中にいる奴には気づかれたと思うのよね。
まあ、そいつも今は彼らに言うつもりもなさそうだし一先ず安心かしら?
妖夢からの不満を聞くのが面倒で彼女の声を遮る。
このあとの立ち回り方を相談しようとしたその時パチパチッと頭の中にほんの小さな衝撃が起こる。
瞬間映像が流れ出した。
いつもの運命が見える前兆だ。
見逃すまいと意識を集中させる。
、、、なるほど。ここに誰が他の人間がくるみたいね。面倒事はこれ以上勘弁してほしいわ。
そいつが来る前に逃げてしまいましょう
妖夢を小声で呼び周囲にバレない程度に消音の結界を貼る。
私の声の雰囲気から真面目な話だと察したようで妖夢はなんの文句も言わずに話を聞いてくれた。
少し目を見開くもすぐ言葉の意味を理解したようで一言だけ返事が返ってくる。
妖夢の同意も得られたため彼らに声をかけようと身体の向きを向ける。
ふと何者かの視線を感じて目線を上げる
そこにいたのはとても強い気配のする呪霊と
あれは、、、、人間?
いや違うわね。
人間のガワをきた何か、、、
瞬間再度頭の中にパチパチッと衝撃が走った。
!!
今流れた衝撃的な映像を頭から追い出し妖夢に問いかける。
はて?忘れていたことなんてあっただろうか?
若干困った様子の彼に妖夢は前置きなしで本題に入った。
その途端、順平の表情は暗くなる。
今更忘れたことに気づいた。
良かった。私達がここに来たのは彼を助けるためでもあるのに身体的に助けても精神的に助けなかったなんて
笑い者になるところだったわ
人間が来たら面倒だったので時間の短縮のため偽りなく伝えたが逆に時間が掛かりそうだ、、、。
運命なんて抽象的なこと持ち出さないほうが良かったのかもしれない、、、、
少年2人の困惑した顔を目に呑気にそんなことを思っていると
妖夢がすかさず助け舟を出してくれた
こっちでは術式っていうのかしら?
少しまずかったかもしれないわね。
オレンジ髪の少年の瞳の中に少しの疑惑が浮かんだことから術式というのは呪術師の中では基本的な言葉だということが分かってしまう。
ここに来る途中で作った手書き、、、、
とは言い難いクオリティの地図を渡す。
妖夢が常日頃から買い出しに行ったりしてるから土地の把握はかなり得意らしいからそれを頼りに書いたからあっているといいのだけど、、、
まあ、間違っていたらその時はその時よ
スタスタスタ
と遠くから聞こえてくる足音に思わず顔を顰める。
せっかく鉢合わせしないようにしていたのにこれじゃ台無しね、、、。
此方を見つめる人間の瞳には警戒の色がとても濃い。
どうともならなそうね〜、、、
さて、どうしましょう?
あわあわと隣で慌てふためく妖夢を認識しつつ少し呆れたがどうしようかと思っていても具体案が浮かばない。
いつもより頭がまわらないことから私も大概焦っているのだなと気づく。
金髪の人間にバレない程度の消音結界を貼る。
本当にこの結界は内緒話にはもってこいだ。
但しこれには幻想郷以外での注釈がつくけれどね
八雲のように結界や壁など内に等しいやつ相手には意味を持たないし幻想郷には読唇術を使える人妖もいる。
案外この結界は使えないものだ。
話が脱線したが
とりあえずどうしようもなくなったため
万が一に考えていた最終手段を使うかと彼女に提案する
わかってる。
調整を間違えたらここら一帯吹き飛ぶ。
そう、、、文字通り吹き飛ぶ。
そうなると目の前の人間も死ぬことになる。
妖夢はそれも危惧しているのだろう。
しかし私だって一応神様だ。
助けた人間をみすみす死なせなんかさせない。
まあ、妖夢が一番心配しているのは私達も死にかねないというところだろうけれど、、、、
まあ、精神体だからある程度は死なないとはいえそれも限度がある。ましてはここは外の世界。
しかも別次元の、、、、。
弱体化だって普通にしている。
私は最近まで外にいたから耐性は幾らかはあるが妖夢は違う。彼女は今まで冥界にいた。私より明らかに耐性は低いだろう。
けど死なせなんかしない。
もしそうなったら幽々子の恨みが途轍もなく怖いもの。
ふわりと結界を解く。
私達の決意の満ちた瞳に目の前の人間も気づいたようだ
残念ながらその決意は彼の望むものとは違うものだが
何をするかはわかっていないようだったがただ事ではない雰囲気に目の前の金髪の人間は武器を取出し構えをとったがもう準備は整っている。
彼らと妖夢の周りに結界を即座に作り自分の神力と霊力を限界まで高めそして爆発させようとしたその瞬間彼らの周りに貼った結界が大きく歪んだ。
計算上ではありえない事象に思わず目を見開く。
、、、!これは呪力!?
一体誰が?
そう考えるも答えは一つしかない
恐らく先程見た呪霊のせいだろう。
目的は、、、、。私を消すことだろうか?
私がアイツらを目撃したのは
アイツらにとって都合が悪かったのかも知れない
しかしこれで折れるほど柔な精神はしていない。
もう一度先ほど貼った結界と同じものを作ろうとした瞬間
どこからか聞き慣れた声がした
その声とともに周囲に桁外れなほど
精巧な結界が瞬時に貼られた
その声もこんな芸当ができる人妖も
とある1人を除いて知りはしない
思わず口角が上がる。
良かった。きてくれたのね
思わず安堵のため息が出る
呆れた声と共に私たちの右斜め前の空間が縦に裂ける
その裂けめの両端に赤いリボンが結ばれた
それが開くと中からいつも通りの
気持ち悪いほどの大量の目がこちらを見てきている
目の前の人間のうち少年2人は大きく動揺し
青年はその顔を歪めた。生理的な嫌悪感があるのだろう
私もそれには理解しかできないがスキマをずっと使ったり
見たりしていればそれも少しは慣れる。
まぁ今はいつもと一転
希望の光が差し込んできているように見えるのだけど
予想に反することはなく
そこから出てきたのはいつもと同じ道士服の紫だ
くるりと傘を回し彼女はいつも通りの胡散臭い笑みを浮かべた
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。