自分の方が付き合いが長くてなんでも知ってるって言いたいわけだ。
ほんとう最近、性格の悪さに磨きがかかってきてるな…苦笑
でも、さすが王道ヒロイン。
まあたそはこんなことでは動揺はしない。
明るく言われて、むしろあなたの方がダメージをくらっている。
この作戦は無効だと気づいたあなたは、バン、と
アルバムを乱暴にとじると、今度はわざとらしく身震いをした。
それで、あなたがカバンから引っ張り出したのは、俺らの高校のジャージだ。
でも自分のじゃない。胸に「絹張」って刺繍がある。どんな理由をつけて借りてきたんだろう。
ドヤ顔でジャージをはおったあなたを見て、まあたそはちょっとおどろいたようだった。
そのとき、僕達の目には、まあたその言葉が矢になって、あなたの体にブッスリとささったのが、はっきり見えた気がした。
いかにも恋人ですってセリフ!
結婚を前提にお付き合いしていますって感じの!
ブス、ブス、と矢が増えていくのが見えるようだ。
しかし、あなたはまためげない。頭をぶるぶる振って気を取り直す。
突然何を言い出すんだこのアホは!!!!!
あれは小学校5年そこらで、初めてスポブラを買ってもらってテンションあがったあなたが、自分から服をまくって見せびらかしただけだろーがー!
ドン引きしてました、というつもりなのか。
でも、まあたそは聞いていなかった。窓の外に向かって手を振っている。
視線の先には、シルクがいた。シルクも笑顔で手を振り返している。
またあなたの頭に矢がささっているぞ。
まあたそは、それには気づかず(当たり前だけども)笑いながら机の上を片付け始めた。
そう言って、まあたそは去っていった。
取り残されたあなたは、もうぴくりとも動かない。
完敗だ。
幼馴染の絆でまあたそを倒すつもりだったのに、
完全に返り討ちにあってしまった。
━━━━━ほんとう、アホだよな。あなた。
私は、やれやれ、と席を立った。
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編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!