あなたのことが気になりつつも
いつまでも引きずるわけにもいかず
3人で楽しくご飯を食べた
帰り際2人の後ろを歩いて
バレないようにこっそり隣の部屋を覗いた
だけど
そこにはもう2人の姿はなかった
レジの列に並ぶ2人に少し走って追いつく
何も考えないようにしようと思い
レジの方に目をやると
窪田さんとあなたがいた
あなたの名前を呼んで引き止めたかった
でもそんなこと出来なくて
親しげに話しながら店をあとにする
2人を目で追うことしか出来なかった
なかなか話し出さない正孝に困惑して首を傾げていると
唇が重なった
もう一度
ゆっくりと近づいてくる
離れようとしたけど
正孝の力には適わなかった
きっとほんの数秒のことだった
だけどとても長かったように感じた
車に戻ろうとした時だった
柱に隠れてキスをするふたりを見てしまった
俺がこの前感じた未練は気のせいだったんだ
あなたはもう俺のことは吹っ切れてたんだ
俺だけが思い出に取り残されて
1人で足掻いてたんだ
そんなふうに考えたら虚しくなって
人がいたところにも関わらず泣いてしまった
2人には話せなかった
話したくなかった
そこから私たちは言葉を交わすことはなく
お互いどこか気まずくて
下を向いたり
横を向いたり
手をいじったり
そんなことをしながら家に帰った
正孝はそう言って私の前から消えた
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。