久しぶりに2人で彼の家に帰る
前までは手を繋いで身を寄せ合って歩いていた
だけど、今はそんなふうに出来なくて
胸が締め付けられた
こんなに近くにいるのに
とても遠くにいる気がした
もう大丈夫
彼が隣にいれば
私はそれだけで大丈夫なのに
そう言って、私を玄関のすぐそこにある椅子に座らせて
彼はリビングに歩いていった
懐かしい
彼はYouTuberとしての活動、アーティストとしての活動、両方してるため忙しくて
いつもデートをするとき
少し遅れて待ち合わせ場所に来る
その時と何も変わらない声で
変わったのは私たちの関係だけ
彼が玄関の鍵を開けようとした時
私は気づけば彼の服の袖を握っていた
ガチャ…
どんな形でも届かない
"おめでとう"
どうするのが正解だったのか
なんで出会ってしまったのか
考えてもわからなかった
そこには俺とあなたの後ろ姿があった
別れるなんて嫌に決まってる
本当のことを伝えればいいのかもしれない
だけど、達也くんが言ってた通り
あなたに迷惑がかかるかもしれない
そんなのは嫌だから
苦しませたくないから
素っ気なく
目も合わせず
ただ別れを告げた
あなたから見える俺はどんなやつなんだろう
嫌われたかな
まあその方がいいか
1人歩く帰り道
あれから何度も後悔した
消すことが出来ない連絡先
毎晩今までのやり取りを眺める
2人の思い出の写真を見る
辛かった
俺酷いよな
もしかしたら、、、
なんて勝手に期待して
あなたの気持ちなんて考えずに
いつもいつも
俺はあなたを幸せに出来ていたのか
苦しませたくないから
そう思って我慢してきたのに
あなたの今にも泣きそうな顔を見ると
何も意味がなかったんだと悟った
なんで今日に限って
なんで俺の誕生日に
おめでとう
まだ好きだよ
あなたの言葉が俺の心に刺さる
ブロックなんか出来ない
無視なんかしたくない
愛してるから
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。