ーーー赤葦ーーー
美苑さんが弾き始めた戦場のメリークリスマスはとても儚く、なぜか胸が締め付けられるようで、流石ピアニストと言わざるを得ない
ーーー木葉ーーー
美月と木兎と合流して伊吹家に向かう。
ほんとは美月が微妙な顔してるの気づいてた。けどやっぱり赤葦には行って欲しくない
ガチャ
美月の声なんてほとんど聞こえない。リビングにもいつもの部屋にも2人はいない。
じゃあ、美苑の部屋か。
あーーーーもう。わかんない。
呆然と立ち尽くす美月と木兎をおいて、美苑の部屋に向かう
コンコン
扉をあけて、見た光景に俺は絶句して、それでも目をそらすことは出来なかった。
ーーー美苑ーーー
振り向くと、すぐ横に赤葦くんが座っていて、
困ったように目を泳がせる赤葦くん
赤葦くんの突然の告白に驚いて声が出なかった。
この前の木葉の告白の時とは違う。戸惑いとかじゃなくて、嬉しいのに悲しくて、笑いたいのに泣きたくなる。
そう言って立ち上がった赤葦くんは、私の前で屈んで、頰に手を当てた
顔をグイッと持ち上げられて、自然と赤葦くんと目が合う。心臓、うるさい。
まるで世界に2人しかいないような錯覚に陥って、ノックの音を聞き逃していた
だんだんと近づいてくる顔に、やっと、今されていることを理解した。
そして、
ああ、嫌じゃない
って思った。
私、赤葦くんが好きなんだ。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。