『君となら・・・』
☆★vo.61★☆
会場はザワつき、「えーッ」って声もたくさん聞こえてた。
勝手なのは分かってる…
濱:よっしゃ!やったろ!
受けて立つわ!!!
やれば出来る子、見せたるわ!!!
崇裕が言うと、他のバンド出演者からも、賛成の声があがった!
濱:俺かて、そのくらい出来るわ〜!!!
○:ムダに大声〜(笑)
べ:〇〇〜お前やるな〜!
革命だわ〜(笑)
○:背中を押したかったんです(笑)
『前へ進む力』になれるか、分からないけど…
私は、色々な人に声をかけられながら、
見に来てくれていた友達の所へ行った。
シゲ:〇〇、大丈夫なん?
○:何が?
シゲ:前回のテスト、メチャメチャ順位良かったんやろ?
○:そうだね、本気で頑張らないとね!
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☆★vo.62★☆
照史の様子が、何だか変だった。
○:どうしたの?元気ないよ?
桐:俺、無理やわ。
○:何が?
桐:勉強嫌いやねん。
○:何それ?!一緒に頑張ろうよ〜
桐:頑張れへんって!
照史らしくなかった。
いつもポジティブで、前向きなのに…
○:どうしたの?何かあった?
桐:何も無いて。
ただ、出来ひんもんは出来ひんのよ。
照史が、いつもと違う事に気付いてたのに…売り言葉に買い言葉だった。
○:何それ!照史らしくないよ!
桐:らしいってなんだよ!
出来ひんもんは、しょうがないやろ!
○:やる前から出来ないなんて、オカシイでしょ?!!!
桐:俺は〇〇とは出来がちゃうねん!
○:別に追い付けって言ってる訳じゃないじゃん!!!
私はまだ、ミュージシャンのスイッチがオンになっていたらしい。
○:マジで言ってんの?
桐:マジやで。そんなん乗れんわ。
○:もう、分かった。そんなだとは、思ってなかったよ。
桐:俺なんて、そんなんや。
こんな照史、見たくない。
怒りが思わぬ言葉を口にした。
つい、やってしまったのだ…
○:そんな照史、好きになれないよ。
もう、別れよう。
桐:分かった、ええよ。別れよう。
!!!えっ?!!!
次の瞬間には、事の真意に気付いた。
やられた…
照史は、コレを狙ってたんだ…
照史が、そんなネガティヴな事を言うはずがない。
分かってたはずなのに、見抜けなかった。
しかも、みんなの前で…
私は、自分の不甲斐なさと、照史の優しさに、心が押し潰されそうだった。
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☆★vo.63★☆
何も言わず去って行った照史を、ただ呆然と見ていた私に、誰かが言った。
輝:〇〇行けよ!後悔するぞ!
輝?
!!!はっ!!!
私は我に返った。
照史を追わなきゃ!
そう、、、後悔する前に!
休日で多くなっていた通行人を、縫うように避けて走った。
○:照史ッ!
照史が振り返った。
私は走った勢いのまま、照史にしがみついた!
桐:どんだけやねん。
○:だって私、約束の1ヶ月過ぎても、別れるつもりなかったから、、、
桐:もう、遅いで。別れてもうた。
○:ヤダ。
私は照史にしがみついたまま、離れられなかった。
照史の優しさは、私が強くいられる、大きな支えになっていたんだ。
でも、もう遅かった。
あの時の照史の決心では、乗り越えられなかった壁が、そこにはあった…
私は、ゆっくり手を離した。
○:いつの間に、、、私の事、すっごく知っちゃったの?!
桐:そりゃあ、毎朝 会って、いっぱい話したからな〜(笑)
○:そっか。
桐:〇〇 ライブの時、人格変わんねん。
○:そっか。
桐:そんな突っ走ったら、そのうちコケるで!?
○:そっか。
桐:でも、〇〇やったら支えてくれる奴、沢山おるやろ。
○:そっか。
もう、何も言えなかった…
桐:ごめんな。守ってやれんくて。
○:ううん、、、
泣かないでいたのに、、、
無理だ…
最後に照史は、泣いてしまった私を、強く抱きしめてくれた。
桐:楽しかった。ありがとう、、、
照史は優しくて、男らしくて、本当に最高の彼氏だった。
なのに私は、照史を傷つけただけだったんだ…
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☆★vo.64★☆
帰り道。
ぼーっとしていた私を見兼ねたらしく、流星が同じバスで帰ってくれていた。
○:あれ?流星、なんでいるの?
藤:荷物運びやな。
○:あっ!ごめん。
いつの間にか、流星が私の荷物を全部持っていてくれた。
バックとか、ギターとか、花束とか…
荷物を受け取って、家で下ろしたが、、、
このまま、バイバイするのが怖かったから、私は流星を、ある所に誘った。
それは、前から連れて行こうと思ってた所。
私は、つまづいた時の拠り所にしていたんだ。
ピンポーン!
○:こんにちは〜〇〇です。
お:〇〇ちゃん、よう来たね〜(笑)
○:実は、おじいちゃんに会わせたい人がいて…
藤:えっ?俺?
○:他に誰が居るのよ!?
覚えてる?この、おじいちゃん。
お:〇〇ちゃんの彼氏かい?
○:違うよ〜(笑)
前に、おじいちゃんが助けてくれた、喧嘩してた奴だよ〜
藤:えっ!あの時の?!!!
そこは、流星が喧嘩していた時、私が助けを求めた おじいちゃんの家だった。
あれから私は、このおじいちゃんと仲良くなり、すっかり孫の様になっていた。
おじいちゃんは、私の一番のファン!
私は、今日のライブDVDをおじいちゃんに渡した。
お:ありがとう!これでまた、長生きできる!
流星君、仲直りできて良かったな?!
藤:はい!
お:こんな可愛い子、泣かしたらいかんよ!
○:あの時は、泣かされたもんね〜
藤:もう、泣かすような事はしません。
〇〇と約束したんで!
お:〇〇ちゃん、いい人 見つけたね〜
○:いい人って、そんなんじゃないから〜
藤:ちょっ、待て待て!
俺、メチャメチャいい人やん!
荷物運びだってするし!
○:『いい人』違いや‼️
藤:へっ??
○:おじいちゃんが言ってるのは、付き合ってる彼氏とかの事!
良い人悪い人の『いい』じゃないの!(笑)
流星の天然で、おじいちゃんも爆笑していた。
お:ほら やっぱり!いい人じゃないの〜!?
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☆★vo.65★☆
近くの公園。
あの時、流星が喧嘩してた場所。
もう、すっかり暗くなっていたのに、私は帰りたくなかった。
それを察したのか、
藤:ちょっと座らへん?
私達は、ベンチに座ってみた。
でも、なぜか言葉も出てこなく、空白の時間が流れた。
私は、これからの事を考えるのが怖かった…
無くした物の大きさが、想像を遥かに超えていたんだ。
藤:なぁ、〇〇?
〇:ん?
藤:俺の事、知っとった?
〇:まぁ〜顔と名前くらいだったけどね。
藤:俺が〇〇を知ったんは、小五の時。
〇:えっなんで?小学校 違ったよね?
藤:おん。俺の学校にミニバスの試合に来た時、〇〇を見つけたんや。
〇:えーッ?!!!
藤:あの時から、俺は見とった。
〇:は?
藤:〇〇がギター始めたんも知っとる。塾に行ってたのも知っとる。部活の帰りに買い食いしてたんも知っとる(笑)
どういう事?
もしかして流星って、ヤバイ人?
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☆★vo.66★☆
藤:中学で一緒になるの楽しみにしてたんやけどなぁ〜、一度も同じクラスにならんかったなぁ〜?!
その時、ボンヤリと思い出した記憶。
中学の入学式の日。
私は階段で思いっきりコケて、筆箱とかばら撒いちゃって…
誰か男子が一緒に拾ってくれて…
「大丈夫か?きいつけや。」って、、、
確かに関西弁だった…
流星だったんだ。
私とは同級生なだけで、何の接点も無かったと思ってたのに。
藤:望の事、好きなんやろ?!
凧場で見た時、すぐ分かったわ。
〇:・・・・・
藤:せっかく偶然 再会したのに、彼氏おるし、他に好きなやつもおるし、ヤンキーには好かれるし。
〇:・・・・・
藤:ずっと後悔やった。あん時、〇〇の腕を振り払った自分が、許せんかった。
バチが当たったんやな。再会したのに、俺の入りこむ隙間なんて無い…
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☆★vo.67★☆
流星、、、
流星に左手を引かれながら走った時、全ての景色が違って見えた。
刹那さの中で、精一杯の力で もがいて、光が差す方向へ、ただひたすらに進んでいる。
そんな光景だった。
私はあなたに、何ができるの?
知りたくて、知りたくない気がしてたんだ。
私は、何も言葉に出来ないまま、たくさんの事を考えていた。
藤:照史がいた場所に、隙間はあるか?
〇:えっ?
藤:俺…じゃあ、、、ダメか?
言葉にしなくても分かる。
今、私の中にあるのは、隙間と言うより、大きな穴。
でもそれは、、、そんな簡単に埋まるとは思えない…
それに、望の事も…
〇:ごめん…
藤:・・・・・だよな。
俺こそ、ごめんな。
流星は家まで送ってくれた。
今日は、曲り角まで行く流星を見送らず、家に入った。
この穴が埋まるなんて、あるのかなぁ?
前あった穴は、新しい恋が埋めてくれた。
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☆★vo.68★☆
そう言えば、、、小六の時、、、
家の前で、何かを拾おうとしたら、ランドセルが空いてて、中身全部出ちゃった事があって、、、
その時も、誰かが駆け寄ってきて拾ってくれた。
「おっちょこちょいやな〜」って、、、
そんな記憶が、いくつも思い出されて、流星だったんだ、、、全部。
なのにどうして、あの時、私の手を振り払ったりしたの?
私はやっぱり知りたいのかもしれない。
流星の中にある、影になっている、暗い部分を。
この日から私は、猛勉強してるか、ボーッとしてるかのどちらかだった。
『みんなとの約束』
私はコレに救われてたのかもしれない。
照史を無くした私が居場所にしたのは、
理科室だった。
音楽室とは違い、ほとんど誰も来ないし、横の部屋には淳太先生。
分からない所があれば、すぐに聞ける、打って付けの場所だった。
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☆★vo.69★☆
重:やっぱりココや〜
ウルサイのが ふたり来た…
隠れてたのにぃ~
○:もう~何で分かるのよぉ?
重:あったりまえやろっ!単純やからすぐ分かるわ!
〇:それは、そっち!
望:あのさぁ、、、○○さぁ、、、
重:応援団やらへん?てか、マネージャー!
チョット照れながら言う望に、割って入るシゲ(笑)
この二人の関係は、何があっても変わらないんだな~
私は、そんな二人の関係を尊敬していた。
だから、普段の私ならば、やるんだろうけど…
今は、乗り気になれなかった。
私は無意識に、『これから』を考える事を拒んでいた。
今は、今やらなければいけない事があって、それに集中してないとダメになっちゃう気がしたんだ。
○:ごめん。チョット忙しいって言うか、、、
重:そっか。残念やけど、しゃ~ないな。
○:でもさぁ、応援してるよ!
重:応援する人を応援するんかい(笑)
○:望、頑張ってね!
望:おんっ!(笑)
重:俺は?
○:はいはい。
重:お~れ~わ~~?
ウルサイのはひとりだった(笑)
望:○○も頑張れよ!(笑)
○:う、うん、、、
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私は、ぼーっと窓の外を見ていた。
テストの答案用紙が配られていた。
「〇〇!はい!」前の人から渡されたのに、気付かなかった。
「始め〜!」
やばい!集中しなきゃ!
私は手首に付けていたヘアゴムで、少し高い位置に髪を束ねた。
望は、そのしぐさを見ていた。
見ていたと言うより、、、
いつも下ろしている髪を、束ねた後ろ姿が、すごく新鮮で、それに見とれていたのだ。
中:テスト、始まっとるぞ〜(ニヤ)
後ろから来て、望の耳もとで言った。
望:うっさいわ!
キーンコーンカーンコーン〜♪
あっという間に終わった。
私は何とか集中し、回答を埋めた。
中:一番後ろのヤツが集めてな〜
一番後ろの席の望は、集めた答案用紙を、淳太先生に渡した。
中:まぁ〜分からんでも無いけどな(ニヤ)
望:っ!!!エロッ!!!
中:何がや!お前やろ!
望:淳太、それマジで やばいで!
中:お前や!
︎︎•••••••••••••︎•••••••••••••︎
☆★vo.70★☆
キーンコーンカーンコーン~♪
全部 終わったぁ~!
里:行っくよ~!
重・望:早っ!
私達はいつもテストの最終日に、寄り道して帰る。
アイスを食べて帰るんだぁ~
里:テスト終わって、応援団も始まるね~
重:おぅ!気合だけは十分だわいっ!
〇:シゲは望のマネージャーでしょ?!
重:なに言うてん!俺かてフレフレするわいっ!
望:ほな、体力つけんとな!それ くれ!
里:こらっ!!私んだよ!!
〇:じゃあ、私にくれ!
重:いやいやいやいや、俺んだぁ~!!!
里・望・〇:あぁぁぁぁぁぁぁーーーッ!!!
すっごく楽しかった。
だって、望のキラキラの笑顔を たっくさん見たから。
私はまた、ずっと見ていたいと思った。
でも、そう思うたび、セツナかった。
明日から何を頑張ればいいの?
私は完全に、進む方向を見失っていたんだ…
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編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。