『君となら・・・』
☆★vo.81★☆
流星は、少しずつ、影の部分を話してくれていた。
私が『聞きたかったけど、聞きたくなかった』言葉だった。
藤:アイツが帰ってくるん知って、急に、心が騒めいて止まらんくて、、、
〇:・・・・・
その時、、、
浅く腰かけていた私は、二の腕を掴まれ引き寄せられた。
キス、、、されてる??
流星は、ゆっくりと離れた。
私は、真っ白になった頭で、どうしたらいいのか分からなくて、固まってしまっていた。
〇:か、帰るね。
藤:・・・・・
流星は、歩き出した私の後ろからついてきた。
何も言わず、家まで送ってくれた。
〇:じゃあね…
藤:待って。
振り返った私は、抱きしめられていた。
それは、とても暖かで、力強くて、、、
大きく空いた穴を埋めるには、十分過ぎるくらいだった。
藤:好きや。今の俺なら、守ってやれる。
でも、、、どうしても、、、
「うん。」とは言えなかった…
私はそっと離れたが、最後に残った繋いだ両手は、離れる事をためらっていた。
私は、「ごめん。」と言い残し、家に入って行った。
また、流星を見送ってあげられなかった…
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☆★vo.82★☆
数日後。
朝礼であいさつしていた転校生の話題で、女子達は騒いでいた。
ぼーっとしていて、朝礼を聞いていなかった私は、話題について行けなかった。
重:やけに ぼーっとしとるなぁ!?
〇:寝られないんだよね、最近。
重:悩み事が尽きへんからな~
〇:シゲは最近どう?順調?
重:まあな。
〇:辛い、、か!?
重:おん、、、
〇:そっか。
私は、弟をなだめるように、シゲの頭をポンポンした。
重:なんで、〇〇には分かるんかな~?
〇:姉弟だからな。
重:ホンマやな~(笑)
そこへ教室に戻ってきた望が、
望:女子が廊下でザワついてんねん!漏れるて!
通行の邪魔だったらしく、イラついていた。
席へ戻り、次の準備をしていると、廊下のザワつきが近づいてきたのが分かった。
その時、ふと、私の前の席に後ろ向きで座った人がいた。
だれ?
私は顔を上げた。
ジ:やっと会えた~!My little girl!
と言いながら、私の鼻を人差し指で、チョンっと触った。
〇:!!!ジェシー????!!!
元カレだった。
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☆★vo.83★☆
〇:な、何でココにいるの?!!!
ジ:〇〇とキャンパスライフを楽しみたくて!
〇:キャンパスって、編入したの?
ジ:YES!!
キーンコーンカーンコーン~♪
ジ:じゃあ、また後で来るね!!
〇:えッ!あッ!チョッ!待っ、、、
行っちゃった、、、
帰ってくるとは聞いてたけど、まさかこの浜高に編入するとは、考えてもいなかった。
重:誰?外人?
望:知り合いなん?
〇:まぁ、、、元カレ。
重・望:元カレェーーッ?!!!
〇:しっ!声デカい!!
クラスのみんなから、注目されてしまった。
てか、どうして今頃、、、
私、どうしたらいいの?
あんなに苦しんで乗り越えて、過去にしたのに、突然 現れて「また来るね」なんて…
勝手 過ぎるよ…
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☆★vo.84★☆
昼休み。
やっぱりまた、やって来た。
ジ:〇〇〜会いたかった〜!
なんで、ノー天気なの!?
〇:私も。聞きたい事たくさんあるし!(怒)
ジ:え?なになに?(笑)
ジェシーだけじゃなく、クラス中が聞こうとしていたのが分かった。
〇:行こ。
ジ:どこへ〜?
〇:人が居ないとこ!(怒)
私は理科室へジェシーを連れて行った。
ジ:怒ってる?
〇:当たり前でしょッ!!!
ジ:ごめんな。待たせちゃって。
〇:別に待ってないし…
ジェシーはうつむいて、説明した。
アメリカへ転勤が決まり「あの子と別れなさい」と父親に言われたそうだ。
でも、そんな事出来ないと反抗したら、条件を出して来たらしい。
「来年の6月まで、あの子に説明せず、いっさい連絡を取らずにいて、それでもまだお互い好きでいられたなら認めよう」と。
だから その日から、連絡を絶ったと言う。
ジェシーは、約束の6月になり、帰国する事と、私が居る『浜高』への編入を許してもらったそう。
〇:今更、そんな事 言われても…
ジ:彼氏いるの?
〇:今は居ないけど…
ジ:マジ?!良かった〜
〇:何も良くないよ!
私は怒りが治らなかった。
ジ:〇〇、本気なんだ俺。ずっと、〇〇に会う日を、それだけを待ち続けて過ごしてきた。
〇:そんなの、信じられないよ!
私は、スゴイ苦しかった!辛かった!
何度メールしても、電話しても、手紙送っても、、、どんなに想っても、届かないんだもん、、、
私は悔しくて、涙が溢れた。
それは、ジェシーにではなく、信じてあげられなかった、自分にだった…
ジ:ホントに ごめんな。
もう、泣かせたりしないから。
そう言うと、泣いてる私を抱きしめてくれた。
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☆★vo.85★☆
放課後の下駄箱。
帰ろうとした私達の前に、ジェシーが待ち伏せしていた。
ジ:〇〇!一緒に帰ろう!
〇:私、友達と帰るから。
ジ:爺やが迎えにきてるから、載せてくよ!
〇:自転車だから、辞めとく。
ジ:自転車 置いてきなよ!明日の朝、また送るからさ〜!いいだろ?
チョット折れそうになっていた私の前に、シゲが立ちはだかった。
重:嫌がっとるやないかい!やめろや!
ジ:??だれ??
重:俺は〇〇の姉弟や!
ジ:は?なに言ってんの?
〇:シゲ…ややこしいわ。
重:てか、お前こそ〇〇の何なんだよ!
ジ:彼氏だよ。
重:ウソや!〇〇は元カレやって言っとったわ!
ジ:でも、ウソじゃないよ。俺達、別れてないから。
〇:ジェシーごめん。今日は辞めとく…
望:〇〇、行こ。
〇:うん。
望は今、何を思ってるんだろう。
また、厄介事が増えて、ウンザリしてるかもな…
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☆★vo.86★☆
重:なぁ〇〇?別れてないって、どういうことなん?
私はシゲと望に、話した。
今日まで、自然消滅だと思っていたと。
そして、望に思いきって聞いてみた。
〇:望?
望:ん?
〇:もう、嫌でしょ?!
望:何がや〜?(笑)
〇:なんか、次から次へと…
望:なに心配しとるん?!こんな事で、俺の気持ちは変わらへんで。
それどころか、負けてたまるかや!アイツの気持ちは、ホンマもんやからな。
私の気持ちは逆だった。
望の気持ちが変わっていたら楽なのにって…
そしたら、望以外の誰かの胸に、飛び込める。
不純だけど、そう思っていた。
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☆★vo.87★☆
毎日、いや、ほとんど毎時間、ジェシーは会いに来た。
私は居場所ではなく、逃げ場を求めていた。
もう、どうしたらいいのか、分からなくて…
昼休みに突入と同時に急いで理科室横へ向かった。
〇:失礼します。
中:おう、どした?
〇:お昼イイ?
中:イイけど…ジェシーか?
〇:毎時間くるって、あり得なくない?
私はお弁当を食べながら、淳太先生に話した。
中:モテ期やなぁ〜
〇:人ごとだと思って!
中:青春やな(笑)
〇:マジ、親身になってよぉ〜
ガラッ!理科室の扉が開いた。
ヤバっ、ジェシーだ!
私は、机の下に隠れた。
ジ:失礼します。
中:おう、なんだ?他の先生なら居ないぞ。
ジ:〇〇、居ますよね。それ。
中:あ、、、
お弁当見つかった!
ジ:〇〇 見っけ〜
〇:はいはい。
ジ:バレバレだし(笑)
そう言ってジェシーは隣に座った。
ジ:それちょうだい!
〇:えっ!私の無くなっちゃうじゃん!
ジ:全部食べれるの?
〇:いや、食べれないけど。もう時間無いし、、、
ジ:じゃあ、ちょうだい!
〇:もう!はい!
ジ:あ〜ん!
中:ココでイチャイチャすな!
〇:イチャイチャじゃないし!
もう、ホントどぉしよぉ〜〜?
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☆★vo.88★☆
私達は、2年前、ジェシーの卒業式の日から付き合う事になったんだ。
それまでは、顔と名前くらいしか知らなかったのに、いきなりジェシーから告られて…
ジ:俺の第2ボタン、もらってくれないかな?
恋愛らしい事をした事が無かった私は、王子様が現れたのかと思った。
ジェシーは私を本当に大切にしてくれた。
夢を見ていたみたいに、楽しかった。
なのに、ちょうど一年後、いなくなってしまった。
それなのに、どうしろって言うの?
言いたいことなんて、たくさん溢れてる。
どれだけ淋しかったか。
どれだけ毎日 泣いたか。
どれだけ会いたかったか…
でも、言えない…
ジェシーに抱きしめられた時、分かったんだ。
私を信じて、辛さに耐えて、やっと、やっと会えたんだって。
そう思ったら言えなかった。
だからと言って、そう簡単には受け入れられなかった。
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☆★vo.89★☆
望:だから、ダメやて!
〇:何それ意味わかんない。
望:アイツんとこは、行くなて!
〇:だから、なんで?
望:絶対、〇〇の事 狙っとる!
〇:んなワケないでしょ!
望:いや、アイツだけは信用ならん!
〇:べーっ!
〇:失礼します。
中:またか…
〇:だって…
中:お弁当やないんか?
〇:うん、なんか食べたくなくて…
中:お前 大丈夫か?全然 元気ないやん!
〇:そんな事より、望が、ジュンジュンの事は「信用ならん」から、ココ来るなって。
ジュンジュン、なんかしたの?
中:望の思い違いや〜
そうだよね。
ジュンジュン、好きな人いるもんね。
中:でも、、、自分では気付いてないだけなんかもな…
〇:えっ?今、なんて言った?
中:・・・・・
〇:そんなワケないでしょ?!
中:・・・・・
どうして、何も言わないの?
何これ?
私は、その場に居られず、慌てて部屋を出た。
望の言ってた事、当たってたのか…
メッチャ ヘコむわ〜!
通いすぎたのか?私のせい?
だって、好きな人いるって言ってたじゃん!
まだ、忘れられないみたいだったじゃん!
気持ちって、案外スグに変わるもんなんだ…
知らなかった。
数日しても、私は相変わらず、逃げ場を求めていた。
本当に、本当に、どうしていいのか全く分からなかったんだ。
音楽室に入ると、ピアノの椅子に座ったヒロがイヤホンで何か聞いていた。
神:はい。
と言ってイヤホンの片方を渡してきた。
『シルエット』だった。
〇:あぁ〜コレ好き〜!!!
神:俺も好き(笑)
はっ!!!天使!!!
ヒロの笑顔、、、ヤバイ!!!
神:〇〇の事も。
〇:えっ?ごめん、イヤホンで聞き取れなかった。
神:なんでもないよ(笑)
ガチャッ!
二重ドアの向こう側を、ジェシーが開けた。
〇:ヤバっ!居ないって言って!
私はピアノの影でしゃがんだ。
ジ:おっ!godじゃ〜ん!
神:よっ!忘れ物?
ジ:いや、探し物。ん?探し人?
神:日本語やばいな(笑)
ジェシーはヒロと話しながら、ピアノのこっち側まで来て、私の目の前でしゃがんだ。
ジ:隠れんぼ?
〇:うん。
ジ:俺ら、ちゃんと2人で話さなきゃな。
〇:うん。
私達は、一緒に帰る事を約束した。
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☆★vo.90★☆
神:ごめん、隠せなかった。
〇:いいよ、ごめんね。
神:ジェシー、いつもいなくなるから、どこ行ってんやろう?って、みんな話してたんやけど…〇〇のところに行ってたんや?!
〇:そうなの…毎時間のようにね。
神:で、なんで?
〇:元カレなんだよね。ってか、そう思っていたのは私だけなんだけど…
私は、ヒロにどこまで話したらイイのか、迷っていた。
神:〇〇、今 フリーなんやろ?
〇:まぁ、そうだよ。
神:俺の番は、、、来たりせ〜へん?
〇:えっ?
神:や、、ジェシーがマジそうやから、、、
なんか、、、取られちゃう気がして…
ヒロらしくなかった。
なんだか覇気がなくて、煮え切らない。
後々 考えたら分かった。
やっとフリーになった好きな人に、急にまたライバル出現で、しかもハーフで高身長で お金持ちでって、、、焦ってしまったんだろう。
でも、その時の私は、なんだかムカついていた。
『ヒロに』と言うより、世の中の男子全般に。
〇:ごめん!(怒)
強い口調で言い残して、音楽室を出た。
どいつもこいつも!!!
なんで私なんだよ!!!
もうホント、ワケ分かんない(怒)
そこに、知らない先輩女子がいて、私を引き止めた。
坂:あんた、何人の男に手〜出してんの?
〇:はぁ?!!!
私は怒りが治っていなくて、反抗的な態度だった。
坂:この前も、音楽室で神山くんとイチャイチャしてたの見てたんだから!
神山くんに近寄らないでくれるっ?!!!
〇:だったら、あんたが、捕まえときゃイイだろっ!!!
私は、自分でも知らないうちに、たくさんの敵を作っていたんだ。
何でだよ…
こんなはずじゃ、なかったのに…
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編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。