第13話

『 君となら・・・ 』121〜
187
2019/06/04 23:58
『君となら・・・』

☆★vo.121★☆

私はトボトボと教室に戻った。

教室では、望が隣の席の女子と話していた。

その子は、清楚でお嬢様感たっぷりで、
言葉遣いも女子らしい、私とは正反対の子だった。

私は少しの間、遠くから見ていた。
近寄れなかったのだ。

私、、、消えたい、、、

そう思った瞬間、お腹が痛くなり、
めまいがしてきて、その場にうずくまった。


里:〇〇、どうした?
〇:お腹、痛くて、、、
重:顔、真っ青やん!


私の異変に気付いた2人が、駆け寄ってきた。


里:保健室 行こ!歩ける?


私は首を振った。


重:乗れ!
〇:でも…
重:ええから!


私はシゲに おんぶされ、保健室へ連れて行かれた。

私はそのまま眠ってしまったらしい。
気付いたら、保健室のベッドだった。

あのカーテンから、流星が覗いたりして(笑)
その時、誰かが覗いた。




︎•••••••••••••︎•••••••••••••︎

☆★vo.122★☆


中:大丈夫か?
〇:なんだ〜ジュンジュンかぁ〜
中:なんだとは なんや〜俺で悪かったなぁ。
〇:ごめん、ごめん(笑)
授業は?大丈夫なの?
中:〇〇の方が大切やからな(笑)
〇:えっ?
中:いや、冗談やて!今は授業 無い時間やから(笑)
〇:なんだ、そっか。だよね(笑)

中:さっきは、ごめんな。取り乱してもうて…
〇:うん。
中:望にバレてんな…
〇:私も…望にバレてた。
ホント、そういう所、鋭いんだよね〜
望には隠し事、出来んのよ〜(笑)


そう。もう、望に言わなきゃだな…


中:俺さ、自分の気持ちを押し通そうなんて思って無いねん。
お前達の事、たくさん考えて、あのパンフレット渡してん。
望にも渡そう思って。
〇:えっ?
中:でも、まずは〇〇が行こうとせな、意味ないやろ?!
せやから、〇〇に先に確認したかってんけど…
なんや、裏目に出てもうたな…ごめん。


なんてイイ先生なんだろう…


〇:でも、私でも難関なのに、悪いけど望には超超超難関だよね?
中:せや。やから、一緒に頑張れって事や!
本気になって頑張らな、離れてまうやろ、お前ら。


ホント、なんてイイ先生なんだよぉ〜
涙が溢れてきた。


中:泣くなや〜こんなとこ望に見られたら、
また怒鳴られるわ〜(笑)
〇:大丈夫、嬉し涙だから(笑)


暖かいなぁ〜
私はこうやって、たくさんの人に助けられているんだ。
心配してくれる仲間がいる。

シゲも里依紗も、望も、、、

伝えなきゃ、本当の事を。
私は、決心した。




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☆★vo.123★☆

放課後。

里:望に話すって事?
〇:うん。隠しておけないから。
里:さすがにショックだよね…
〇:だから、望と私がいつもみたいに一緒に居れなくなったら、望の方に行ってね。
里:そんな、〇〇を無視するなんて出来ないよ!
〇:明日には話す。決めたから。
里:・・・・・
〇:ごめんね。でも、これだけは言っておく。
私は、里依紗の事が、大好きです!
里:もう〜泣かすなよ〜(泣)
〇:(笑)ごめんね、ホント。
里:分かったよ!頑張る!
知ってた?私、女優なんだから(笑)




その夜、、、
ピンポーン♪

流星が傘を返しにきた。
ってか、いつも急なんだよな…


竜:上がってきなよ〜
藤:や、傘返しにきただけやから…
竜:イイじゃんイイじゃん!


お風呂から上がると…
リビングの隣の部屋で、誰かが竜とゲームをしてた。


〇:ッ!!!流星ぇーッ?!!!
藤:よっ!
〇:なんでいるの?
藤:傘返しに来た。
〇:イヤイヤイヤイヤ、ゲームしてるじゃん!
竜:〇〇黙って!今、集中してるんだから!


何なんだ、男子ってのは…


○:あっそ!


私は自分の部屋に戻った。

「傘返しに来た」とか理由付けて、私に会いに来てくれたんじゃなかったんかい!

女子がその立場だったら、可愛く思えるのになぁ~
「ホントは会いに来ちゃった!」みたいなね(笑)

何でだろう?なんか腹立ってきた!!!

私は、ギターを持ちヘッドホンをした。
そして、搔き鳴らし続けた。




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☆★vo.124★☆

しばらくして気付くと、流星が後ろにいた。


○:うわぁーッ!!!
  勝手に部屋 入らないでよ!!!
藤:激しいな(笑)
○:勝手に聞かないでよ!!!
藤:や、勝手に聞こえるやん(笑)
○:だから、勝手に入ってくるからでしょ!


なんで、いつもかき乱すのよ!


〇:ゲーム終わったの?
藤:おん。勝ったで!
〇:はいはい。
藤:何これ?W大のパンフやん!
〇:あぁ~今日、先生に勧められたの。
藤:えっ?行くん?
〇:まだ決めてない…


流星には私の夢、話してなかったっけ…


藤:頑張りや!
〇:えっ?
藤:応援しとるから。


なんか、考えてたのとは違う言葉だった。


〇:私が東京行っても、なんとも無い?
藤:・・・・・


流星はうつむいてしまった。


藤:夢、、、なんやろ?
〇:えっ?知ってたの?
藤:おん。望に聞いた。
〇:えっ?!!!望に?!!!


この前のライブで会って、意気投合したらしく、毎日の様に連絡してるらしい。

メッチャ仲良しじゃん!
そんなの聞いてないし!

ホント、男子って、何なんだ!!!


藤:でも、こないだの事は話してへん。
〇:その事なんだけど、、、明日、話すつもり。
藤:そっか。
〇:うん。
藤:望さぁ~、、、メッチャいいヤツな!
〇:うん。ホント。
藤:話すの、、、怖ないか?
〇:・・・怖い。
藤:何て言うん?
〇:それは、、、流星の事、、、
藤:彼氏では無いよな?
〇:・・・・・


そう、付き合っている訳ではないのだ。

流星を好きになったとは言え、望への気持ちは変っていなかった。

明日から、望に嫌われて過ごすんだ。
そう思うと、、、押しつぶされそうだ。


〇:でも、、、後悔してないから。


照史と別れて、知ったことがあった。

好きという気持ちは、偽りで固めようとしても、いつかは崩れていく。

このまま、隠して後悔するより、伝えて嫌われよう。

ただ、今の私には、流星と付き合うという選択肢は、なぜか無かった。

そのせいか、、、スゴく怖かった。




︎•••••••••••••︎•••••••••••••︎

☆★vo.125★☆


藤:じゃ、帰るな。
〇:うん、下まで送るね。
藤:明日…頑張れよ。
〇:うん。
藤:なんかあったら、いつでも言えよ。
〇:・・・うん…


流星は部屋のドアに手をかけようとしたが…


振り向いて私を抱きしめた。


私もそっと手を回した。


流星のドキドキが響いてきて、
ふたりのドキドキが重なった。

答えが出ていないふたりの関係が、
余計にドキドキさせていた。

苦しくて、息が荒くなって、、、
私達は、どちらからともなくキスをした。

深い、、、
流星の勢いが、私を壁へ押し付けた。

もうダメ、、、
自分が落ちていくのが分かった。

唇が離れ、うつむいた私の頬を、流星の大きな手が触れ、
もう一度、、、



こんなの、初めて、、、



過激なキスと、腰へ回った流星の手が、
違うものを感じさせた。

このまま、、、
どこかへ さらわれてしまう気がしたほど、、、


唇を離して、


藤:連れ去りたいな…


そう言うと、私を強く抱きしめた。

イイかも知れない…
私はまた、どこかの世界へ迷い込んでしまった感覚だった。


藤:俺、いつまでも待っとるから。
〇:うん。


帰り、また角まで行くのを見送った。

手を振る流星が、いつも以上に愛おしかった。



その夜は、やっぱり眠れなかった。

望へ伝えなくてはならない怖さ。

と、さっきの流星との、、、を思い出して、、、
胸がギュッてなる。

心がバラバラになりそうだよ…


夜が明けていくのを、ベランダにもたれ、見ていた。

決戦の日だな!

シャワーを浴び 気合いを入れ、いつもより ずっと早く家を出た。




︎•••••••••••••︎•••••••••••••︎

☆★vo.126★☆

朝早い教室には、誰も居なかった。
そこへ、望がやってきた。
思ってたのより、かなり早く。

私はチョット焦ってしまった。


望:えっ!なんで?
〇:あ、あのさぁ、、、


ダメだ、言い出せない…

そこへ、1人の女子が入ってきた。
望の隣の席の、真弓ちゃんだった。


真:おはよ〜!あれっ?〇〇ちゃんも朝練?
〇:いや、その、だね。
真:望くん行ける?
望:お、おん。
真:じゃあ、行ってきま〜す(笑)


えっ?どこへ?

望は真弓ちゃんに押されて、行ってしまった。


重:やっべ!ギリ!お?〇〇!早いな!
〇:!!!今日なにがあるのッ?!!!
重:何って、応援団の朝練やけど…どないしたん、そんな勢いで?
〇:ううん。なんでも、、、
重:あっ!時間ヤバイから、後で聞く!
あっ!今日、日直、頼むな!絶対、後で聞くからな!


・・・シゲも行っちゃった…

不発弾だったな。
てか私、発射装置に手を掛けたくらいしか出来て無い…

日直だったのか。職員室、行くか…


って…ジュンジュン居ないじゃん!

私は理科室へ行って、ジュンジュンに愚痴った。


中:はいはい。悪かった悪かった。
〇:また、そうやって子供扱いする!
もう、ほとんど大人なんだから!
中:はいはい。
〇:あんな事や、こんな事だって、知ってるんだから〜!
中:どんな事やねん。キスくらいしか、した事ないやろ(笑)
〇:っ!!!


なんで分かるの?
やっぱり私、お子ちゃまなのか…



私はぼーっとしながら、結構ドッサリあるプリント類を持って、教室までの階段を登っていた。


重:〇〇!おい、〇〇!


えっ?誰か呼んだ?
見回すと上の踊り場から、シゲが呼んでいた。


重:早よこ〜い!そのプリント、配らなあかんやろ〜
〇:てか、手伝いなよ!はい!


私はプリントを全部、シゲに渡して、廊下を歩き出した。




︎•••••••••••••︎•••••••••••••︎

☆★vo.127★☆


っ!!!

気付くと、なぜかシゲを盾にして、後ろに隠れ、廊下の先を覗いていた。

廊下の向こう側から、望と真弓ちゃんが楽しそうに会話しながら、教室へ入って行った。


重:隠れんくても…
〇:だって…
重:気にせんくて大丈夫や〜
〇:だって…
重:俺らがこうやって仲ええのと同じやて!
〇:だって…


いくら 鈍感なシゲだって、分かってるはず。
私とシゲみたいな関係じゃない。

望、、、幸せなのかなぁ…
幸せ だったらイイんだけど…


重:真弓ちゃん、マネージャーやっとるんよ。
里:そっか。狙いは望だね。
〇:やっぱり…(ガックリ)
重:や、望からは好きにならんよ。
里:そんなの、なんでシゲが分かるのよ?
男なんてオオカミだって!
〇:そうなんだ…オオカミなんだ…
重:なに落ち込ませとるん!アホか!
里:現実だよ!アホはどっちだっ!
〇:シゲもそうなの?
重・里:・・・・・
〇:そうなんだ。


流星との事を思い出して、胸がギュッとした。


オオカミか、、、かもな。


マネージャーに誘われた時、受けてれば良かったな…




︎•••••••••••••︎•••••••••••••︎

☆★vo.128★☆

休み時間。
私は教室後ろの一番下のロッカーに物を入れ、しゃがんだまま動けずにいた。

窓から強い風が入り込み、カーテンをはためかせた。

その向こうにある青空に、突き刺さるような入道雲が、奇麗すぎて痛かった。


松:〇〇ちゃん?どうしたの?


私は、声をかけられている事に気付かなかった。


松:〇〇ちゃんッ!!!
〇:わっ!なにっ?大きい声で!
松:ごめん。何見てたの?
〇:えっ?・・・なんにも。
松:ホントに?
〇:うん。もぉ〜何言ってんの〜(笑)


私はチョットごまかして、元気なふりをした。
てか、誰だっけ?
クラスメイトの…松村くん?だったかな。


松:ちょっと…話したい事があるんだけど、お昼一緒にどぉかなぁ?
〇:う、、、うん、、、
松:大丈夫だよ、下心はないから。こう見えても彼女いるし!
〇:分かった。いいよ。


私達は庭のベンチに座った。


松:なんか食べないの?
〇:うん、、、食べたくなくて。
松:そっか、やっぱり誘って良かった。
〇:なんで?


松村くんは今年初めて同じクラスになった。

お互い、こうやって話すのは初めてなのに、この人は凄く偉かった。


松:さっき、窓の外、ぼーっと見てたのに、
僕が聞いたら「何も見てない」って言ったでしょ?
  僕もそうだったんだ。
実は受験の時に、ウツになっちゃってね。
〇:えっ!!!


それは、予想もしていない話だった。


松:追い詰められちゃったんだよね。知らないうちに。
  最初は食欲が無くなって、それが原因なのか、
頭がぼーっとする事が多くなって、
気付くと窓の外ばかり眺めてた。
〇:そうだったんだ…


私と同じかも…


松:「何見てたの?」って聞かれても、
「何も見ていない」って答える。
  空を見て、何かを感じ取っているのに、
それを言葉にする能力が欠けてきてたんだよね。


私はチョット怖くなっていた。
病気なのかな?私?


〇:それで、どうしたの?
松:僕の場合、受験に縛られていたせいだったから、
受験を辞めたんだ。
  ホント言うと僕、一年年上なんだよね(笑)
〇:えっ!そうなの?
松:うん。クラスで知ってるのは、○○ちゃんだけ。
〇:それは、かなりの秘密だね(笑)


その時、知らない女子が来て、私の目の前に立ちはだかった。



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☆★vo.129★☆


次の瞬間!バチンッ!!!


雪:私の北斗くん、取らないでよッ!!!


何が起こったのか、分からなかった。

左の頬が、ジンジンしていた。


松:雪ちゃん!なにしてるんだよ!
雪:だって、この女が北斗くんに手ぇ出すから!!!
松:何言ってるの、誤解だって!!!

里:〇〇ッ!大丈夫?!!!
〇:う、うん。平気。


どこにも見当たらなかった『かなり落ち込んでいた私』を心配して、里依紗とシゲが探しに来てくれた。


重:おい!謝れ!
雪:謝るのは そっちの方でしょ!!!
重:人を傷めつけといて、その態度はなんや!
〇:シゲ、やめて。

松:雪ちゃん、もういいから、あっちで話そう。
  〇〇ちゃん、ごめんね。

重:〇〇、お人好しにも程がある!
〇:あの子の気持ちにもなってみなよ…
里:うん。そうだね。
重:・・・・・
里:保健室行こ。


この二人に保健室 連れて来られるの、日常になってるな。

あの後、松村くんは事情を説明して分かってもらったらしい。
そして、二人で職員室へ行き、先生に話した。

雪ちゃんは、親を呼び出され、先生と話をしたそうだ。

ウチにも、親に連絡が行った。
が、「子供同士のケンカだから」と、
母は私を迎えには来なかった。

私には分かった。
母は、相手側の親の立場を考えて、
大ごとにしないよう配慮したのだ。

でも『子供のケンカ』って…(笑)
母らしい、雑な言い訳だな。



︎•••••••••••••︎•••••••••••••︎

☆★vo.130★☆

私は保冷剤を当てながら教室へ戻った。


重:〇〇、大丈夫か?そこ、どうなっとるん?


保冷剤を離し、頬を見せた。


重:手跡!コレやばいって〜
〇:大げさ〜(笑)
望:どないしたん?


望、、、

私は、望こそどうしてたのか聞きたかった。

望だけ私を探しに来なかった。

なにしてたの?
どこにいたの?
誰と…いたの?


重:跡が残っとるんよ!
望:えっ!見せて!
〇:別にいいよ〜大丈夫だから〜
望:隠し事は無しや!見せてみ!


隠してなんかいない。
ただ、言い出せないだけ…


「オオカミに襲われました」なんて…




家に帰ると、すごい勢いで竜がとんで来た。


竜:〇〇!大丈夫?!!!
〇:顔近い!大丈夫だから。ありがとう(笑)
竜:冷やした方がイイでしょ?保冷剤もってくるね!


なんて可愛い弟なんだ〜
ホント癒しだな。


母:明日には消えてるとイイね〜
〇:うん。・・・ありがとね。
母:えっ?
〇:でももう、子供じゃぁないよ(笑)
母:私から見れば、まだまだ お子ちゃまよ〜

〇:好きな人ってさぁ、、、ひとりだけだった?
母:なに急に?
〇:チョットね…
母:若いんだから、好きもなにも、分かるはずがないのよ(笑)
素直に進めばいいの!
 好きって気持ちをコントロールできる人なんていないんだから。
〇:そっか。
母:大人になっていくんだね、〇〇も…


母は嬉しそうで、淋しそうで、優しかった。


〇:それ、やっていい?


私は久しぶりに母のお手伝いをした。


夕食後、ピンポーン♪
誰かがやってきた。

母が出ると、雪ちゃんとお母さんだった。
ふたりは、済まなそうな顔をしていた。


母:ここじゃぁ、なんなので上がってください。



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