『君となら・・・』
☆★vo.121★☆
私はトボトボと教室に戻った。
教室では、望が隣の席の女子と話していた。
その子は、清楚でお嬢様感たっぷりで、
言葉遣いも女子らしい、私とは正反対の子だった。
私は少しの間、遠くから見ていた。
近寄れなかったのだ。
私、、、消えたい、、、
そう思った瞬間、お腹が痛くなり、
めまいがしてきて、その場にうずくまった。
里:〇〇、どうした?
〇:お腹、痛くて、、、
重:顔、真っ青やん!
私の異変に気付いた2人が、駆け寄ってきた。
里:保健室 行こ!歩ける?
私は首を振った。
重:乗れ!
〇:でも…
重:ええから!
私はシゲに おんぶされ、保健室へ連れて行かれた。
私はそのまま眠ってしまったらしい。
気付いたら、保健室のベッドだった。
あのカーテンから、流星が覗いたりして(笑)
その時、誰かが覗いた。
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☆★vo.122★☆
中:大丈夫か?
〇:なんだ〜ジュンジュンかぁ〜
中:なんだとは なんや〜俺で悪かったなぁ。
〇:ごめん、ごめん(笑)
授業は?大丈夫なの?
中:〇〇の方が大切やからな(笑)
〇:えっ?
中:いや、冗談やて!今は授業 無い時間やから(笑)
〇:なんだ、そっか。だよね(笑)
中:さっきは、ごめんな。取り乱してもうて…
〇:うん。
中:望にバレてんな…
〇:私も…望にバレてた。
ホント、そういう所、鋭いんだよね〜
望には隠し事、出来んのよ〜(笑)
そう。もう、望に言わなきゃだな…
中:俺さ、自分の気持ちを押し通そうなんて思って無いねん。
お前達の事、たくさん考えて、あのパンフレット渡してん。
望にも渡そう思って。
〇:えっ?
中:でも、まずは〇〇が行こうとせな、意味ないやろ?!
せやから、〇〇に先に確認したかってんけど…
なんや、裏目に出てもうたな…ごめん。
なんてイイ先生なんだろう…
〇:でも、私でも難関なのに、悪いけど望には超超超難関だよね?
中:せや。やから、一緒に頑張れって事や!
本気になって頑張らな、離れてまうやろ、お前ら。
ホント、なんてイイ先生なんだよぉ〜
涙が溢れてきた。
中:泣くなや〜こんなとこ望に見られたら、
また怒鳴られるわ〜(笑)
〇:大丈夫、嬉し涙だから(笑)
暖かいなぁ〜
私はこうやって、たくさんの人に助けられているんだ。
心配してくれる仲間がいる。
シゲも里依紗も、望も、、、
伝えなきゃ、本当の事を。
私は、決心した。
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☆★vo.123★☆
放課後。
里:望に話すって事?
〇:うん。隠しておけないから。
里:さすがにショックだよね…
〇:だから、望と私がいつもみたいに一緒に居れなくなったら、望の方に行ってね。
里:そんな、〇〇を無視するなんて出来ないよ!
〇:明日には話す。決めたから。
里:・・・・・
〇:ごめんね。でも、これだけは言っておく。
私は、里依紗の事が、大好きです!
里:もう〜泣かすなよ〜(泣)
〇:(笑)ごめんね、ホント。
里:分かったよ!頑張る!
知ってた?私、女優なんだから(笑)
その夜、、、
ピンポーン♪
流星が傘を返しにきた。
ってか、いつも急なんだよな…
竜:上がってきなよ〜
藤:や、傘返しにきただけやから…
竜:イイじゃんイイじゃん!
お風呂から上がると…
リビングの隣の部屋で、誰かが竜とゲームをしてた。
〇:ッ!!!流星ぇーッ?!!!
藤:よっ!
〇:なんでいるの?
藤:傘返しに来た。
〇:イヤイヤイヤイヤ、ゲームしてるじゃん!
竜:〇〇黙って!今、集中してるんだから!
何なんだ、男子ってのは…
○:あっそ!
私は自分の部屋に戻った。
「傘返しに来た」とか理由付けて、私に会いに来てくれたんじゃなかったんかい!
女子がその立場だったら、可愛く思えるのになぁ~
「ホントは会いに来ちゃった!」みたいなね(笑)
何でだろう?なんか腹立ってきた!!!
私は、ギターを持ちヘッドホンをした。
そして、搔き鳴らし続けた。
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☆★vo.124★☆
しばらくして気付くと、流星が後ろにいた。
○:うわぁーッ!!!
勝手に部屋 入らないでよ!!!
藤:激しいな(笑)
○:勝手に聞かないでよ!!!
藤:や、勝手に聞こえるやん(笑)
○:だから、勝手に入ってくるからでしょ!
なんで、いつもかき乱すのよ!
〇:ゲーム終わったの?
藤:おん。勝ったで!
〇:はいはい。
藤:何これ?W大のパンフやん!
〇:あぁ~今日、先生に勧められたの。
藤:えっ?行くん?
〇:まだ決めてない…
流星には私の夢、話してなかったっけ…
藤:頑張りや!
〇:えっ?
藤:応援しとるから。
なんか、考えてたのとは違う言葉だった。
〇:私が東京行っても、なんとも無い?
藤:・・・・・
流星はうつむいてしまった。
藤:夢、、、なんやろ?
〇:えっ?知ってたの?
藤:おん。望に聞いた。
〇:えっ?!!!望に?!!!
この前のライブで会って、意気投合したらしく、毎日の様に連絡してるらしい。
メッチャ仲良しじゃん!
そんなの聞いてないし!
ホント、男子って、何なんだ!!!
藤:でも、こないだの事は話してへん。
〇:その事なんだけど、、、明日、話すつもり。
藤:そっか。
〇:うん。
藤:望さぁ~、、、メッチャいいヤツな!
〇:うん。ホント。
藤:話すの、、、怖ないか?
〇:・・・怖い。
藤:何て言うん?
〇:それは、、、流星の事、、、
藤:彼氏では無いよな?
〇:・・・・・
そう、付き合っている訳ではないのだ。
流星を好きになったとは言え、望への気持ちは変っていなかった。
明日から、望に嫌われて過ごすんだ。
そう思うと、、、押しつぶされそうだ。
〇:でも、、、後悔してないから。
照史と別れて、知ったことがあった。
好きという気持ちは、偽りで固めようとしても、いつかは崩れていく。
このまま、隠して後悔するより、伝えて嫌われよう。
ただ、今の私には、流星と付き合うという選択肢は、なぜか無かった。
そのせいか、、、スゴく怖かった。
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☆★vo.125★☆
藤:じゃ、帰るな。
〇:うん、下まで送るね。
藤:明日…頑張れよ。
〇:うん。
藤:なんかあったら、いつでも言えよ。
〇:・・・うん…
流星は部屋のドアに手をかけようとしたが…
振り向いて私を抱きしめた。
私もそっと手を回した。
流星のドキドキが響いてきて、
ふたりのドキドキが重なった。
答えが出ていないふたりの関係が、
余計にドキドキさせていた。
苦しくて、息が荒くなって、、、
私達は、どちらからともなくキスをした。
深い、、、
流星の勢いが、私を壁へ押し付けた。
もうダメ、、、
自分が落ちていくのが分かった。
唇が離れ、うつむいた私の頬を、流星の大きな手が触れ、
もう一度、、、
こんなの、初めて、、、
過激なキスと、腰へ回った流星の手が、
違うものを感じさせた。
このまま、、、
どこかへ さらわれてしまう気がしたほど、、、
唇を離して、
藤:連れ去りたいな…
そう言うと、私を強く抱きしめた。
イイかも知れない…
私はまた、どこかの世界へ迷い込んでしまった感覚だった。
藤:俺、いつまでも待っとるから。
〇:うん。
帰り、また角まで行くのを見送った。
手を振る流星が、いつも以上に愛おしかった。
その夜は、やっぱり眠れなかった。
望へ伝えなくてはならない怖さ。
と、さっきの流星との、、、を思い出して、、、
胸がギュッてなる。
心がバラバラになりそうだよ…
夜が明けていくのを、ベランダにもたれ、見ていた。
決戦の日だな!
シャワーを浴び 気合いを入れ、いつもより ずっと早く家を出た。
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☆★vo.126★☆
朝早い教室には、誰も居なかった。
そこへ、望がやってきた。
思ってたのより、かなり早く。
私はチョット焦ってしまった。
望:えっ!なんで?
〇:あ、あのさぁ、、、
ダメだ、言い出せない…
そこへ、1人の女子が入ってきた。
望の隣の席の、真弓ちゃんだった。
真:おはよ〜!あれっ?〇〇ちゃんも朝練?
〇:いや、その、だね。
真:望くん行ける?
望:お、おん。
真:じゃあ、行ってきま〜す(笑)
えっ?どこへ?
望は真弓ちゃんに押されて、行ってしまった。
重:やっべ!ギリ!お?〇〇!早いな!
〇:!!!今日なにがあるのッ?!!!
重:何って、応援団の朝練やけど…どないしたん、そんな勢いで?
〇:ううん。なんでも、、、
重:あっ!時間ヤバイから、後で聞く!
あっ!今日、日直、頼むな!絶対、後で聞くからな!
・・・シゲも行っちゃった…
不発弾だったな。
てか私、発射装置に手を掛けたくらいしか出来て無い…
日直だったのか。職員室、行くか…
って…ジュンジュン居ないじゃん!
私は理科室へ行って、ジュンジュンに愚痴った。
中:はいはい。悪かった悪かった。
〇:また、そうやって子供扱いする!
もう、ほとんど大人なんだから!
中:はいはい。
〇:あんな事や、こんな事だって、知ってるんだから〜!
中:どんな事やねん。キスくらいしか、した事ないやろ(笑)
〇:っ!!!
なんで分かるの?
やっぱり私、お子ちゃまなのか…
私はぼーっとしながら、結構ドッサリあるプリント類を持って、教室までの階段を登っていた。
重:〇〇!おい、〇〇!
えっ?誰か呼んだ?
見回すと上の踊り場から、シゲが呼んでいた。
重:早よこ〜い!そのプリント、配らなあかんやろ〜
〇:てか、手伝いなよ!はい!
私はプリントを全部、シゲに渡して、廊下を歩き出した。
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☆★vo.127★☆
っ!!!
気付くと、なぜかシゲを盾にして、後ろに隠れ、廊下の先を覗いていた。
廊下の向こう側から、望と真弓ちゃんが楽しそうに会話しながら、教室へ入って行った。
重:隠れんくても…
〇:だって…
重:気にせんくて大丈夫や〜
〇:だって…
重:俺らがこうやって仲ええのと同じやて!
〇:だって…
いくら 鈍感なシゲだって、分かってるはず。
私とシゲみたいな関係じゃない。
望、、、幸せなのかなぁ…
幸せ だったらイイんだけど…
重:真弓ちゃん、マネージャーやっとるんよ。
里:そっか。狙いは望だね。
〇:やっぱり…(ガックリ)
重:や、望からは好きにならんよ。
里:そんなの、なんでシゲが分かるのよ?
男なんてオオカミだって!
〇:そうなんだ…オオカミなんだ…
重:なに落ち込ませとるん!アホか!
里:現実だよ!アホはどっちだっ!
〇:シゲもそうなの?
重・里:・・・・・
〇:そうなんだ。
流星との事を思い出して、胸がギュッとした。
オオカミか、、、かもな。
マネージャーに誘われた時、受けてれば良かったな…
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☆★vo.128★☆
休み時間。
私は教室後ろの一番下のロッカーに物を入れ、しゃがんだまま動けずにいた。
窓から強い風が入り込み、カーテンをはためかせた。
その向こうにある青空に、突き刺さるような入道雲が、奇麗すぎて痛かった。
松:〇〇ちゃん?どうしたの?
私は、声をかけられている事に気付かなかった。
松:〇〇ちゃんッ!!!
〇:わっ!なにっ?大きい声で!
松:ごめん。何見てたの?
〇:えっ?・・・なんにも。
松:ホントに?
〇:うん。もぉ〜何言ってんの〜(笑)
私はチョットごまかして、元気なふりをした。
てか、誰だっけ?
クラスメイトの…松村くん?だったかな。
松:ちょっと…話したい事があるんだけど、お昼一緒にどぉかなぁ?
〇:う、、、うん、、、
松:大丈夫だよ、下心はないから。こう見えても彼女いるし!
〇:分かった。いいよ。
私達は庭のベンチに座った。
松:なんか食べないの?
〇:うん、、、食べたくなくて。
松:そっか、やっぱり誘って良かった。
〇:なんで?
松村くんは今年初めて同じクラスになった。
お互い、こうやって話すのは初めてなのに、この人は凄く偉かった。
松:さっき、窓の外、ぼーっと見てたのに、
僕が聞いたら「何も見てない」って言ったでしょ?
僕もそうだったんだ。
実は受験の時に、ウツになっちゃってね。
〇:えっ!!!
それは、予想もしていない話だった。
松:追い詰められちゃったんだよね。知らないうちに。
最初は食欲が無くなって、それが原因なのか、
頭がぼーっとする事が多くなって、
気付くと窓の外ばかり眺めてた。
〇:そうだったんだ…
私と同じかも…
松:「何見てたの?」って聞かれても、
「何も見ていない」って答える。
空を見て、何かを感じ取っているのに、
それを言葉にする能力が欠けてきてたんだよね。
私はチョット怖くなっていた。
病気なのかな?私?
〇:それで、どうしたの?
松:僕の場合、受験に縛られていたせいだったから、
受験を辞めたんだ。
ホント言うと僕、一年年上なんだよね(笑)
〇:えっ!そうなの?
松:うん。クラスで知ってるのは、○○ちゃんだけ。
〇:それは、かなりの秘密だね(笑)
その時、知らない女子が来て、私の目の前に立ちはだかった。
︎•••••••••••••︎•••••••••••••︎
☆★vo.129★☆
次の瞬間!バチンッ!!!
雪:私の北斗くん、取らないでよッ!!!
何が起こったのか、分からなかった。
左の頬が、ジンジンしていた。
松:雪ちゃん!なにしてるんだよ!
雪:だって、この女が北斗くんに手ぇ出すから!!!
松:何言ってるの、誤解だって!!!
里:〇〇ッ!大丈夫?!!!
〇:う、うん。平気。
どこにも見当たらなかった『かなり落ち込んでいた私』を心配して、里依紗とシゲが探しに来てくれた。
重:おい!謝れ!
雪:謝るのは そっちの方でしょ!!!
重:人を傷めつけといて、その態度はなんや!
〇:シゲ、やめて。
松:雪ちゃん、もういいから、あっちで話そう。
〇〇ちゃん、ごめんね。
重:〇〇、お人好しにも程がある!
〇:あの子の気持ちにもなってみなよ…
里:うん。そうだね。
重:・・・・・
里:保健室行こ。
この二人に保健室 連れて来られるの、日常になってるな。
あの後、松村くんは事情を説明して分かってもらったらしい。
そして、二人で職員室へ行き、先生に話した。
雪ちゃんは、親を呼び出され、先生と話をしたそうだ。
ウチにも、親に連絡が行った。
が、「子供同士のケンカだから」と、
母は私を迎えには来なかった。
私には分かった。
母は、相手側の親の立場を考えて、
大ごとにしないよう配慮したのだ。
でも『子供のケンカ』って…(笑)
母らしい、雑な言い訳だな。
︎•••••••••••••︎•••••••••••••︎
☆★vo.130★☆
私は保冷剤を当てながら教室へ戻った。
重:〇〇、大丈夫か?そこ、どうなっとるん?
保冷剤を離し、頬を見せた。
重:手跡!コレやばいって〜
〇:大げさ〜(笑)
望:どないしたん?
望、、、
私は、望こそどうしてたのか聞きたかった。
望だけ私を探しに来なかった。
なにしてたの?
どこにいたの?
誰と…いたの?
重:跡が残っとるんよ!
望:えっ!見せて!
〇:別にいいよ〜大丈夫だから〜
望:隠し事は無しや!見せてみ!
隠してなんかいない。
ただ、言い出せないだけ…
「オオカミに襲われました」なんて…
家に帰ると、すごい勢いで竜がとんで来た。
竜:〇〇!大丈夫?!!!
〇:顔近い!大丈夫だから。ありがとう(笑)
竜:冷やした方がイイでしょ?保冷剤もってくるね!
なんて可愛い弟なんだ〜
ホント癒しだな。
母:明日には消えてるとイイね〜
〇:うん。・・・ありがとね。
母:えっ?
〇:でももう、子供じゃぁないよ(笑)
母:私から見れば、まだまだ お子ちゃまよ〜
〇:好きな人ってさぁ、、、ひとりだけだった?
母:なに急に?
〇:チョットね…
母:若いんだから、好きもなにも、分かるはずがないのよ(笑)
素直に進めばいいの!
好きって気持ちをコントロールできる人なんていないんだから。
〇:そっか。
母:大人になっていくんだね、〇〇も…
母は嬉しそうで、淋しそうで、優しかった。
〇:それ、やっていい?
私は久しぶりに母のお手伝いをした。
夕食後、ピンポーン♪
誰かがやってきた。
母が出ると、雪ちゃんとお母さんだった。
ふたりは、済まなそうな顔をしていた。
母:ここじゃぁ、なんなので上がってください。
︎•••••••••••••︎•••••••••••••︎
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!
転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。