第33話

宇宙への旅四名様
1,505
2021/06/17 15:00
江戸に来てからしばらく経った



だが、音の足取りは未だ掴めず



ただ真選組の女中としての日々が続いていた



朝は誰よりも早く起きて朝食の準備



日中は洗濯物干しや布団干し



昼食はみなバラバラで近くの定食屋に行ったり



非番の隊士たちの中には部屋でごろごろしたりして食べない者もいた



お昼を過ぎるとスーパーへ行き食材の買い出しに行く



そこで銀時達や巡回中の隊士達と道草を食う



屯所に戻って洗濯物を取り込み畳む



日が傾いてきたら夕飯の準備をする



夕飯後食器を片付けると夕飯の記録と明日の献立を考える



隊士達が風呂から上がった頃広い大浴場で1人湯船に浸かる



髪の毛や体のケアをして布団に着く



この1日がただ淡々と繰り返されてきた











土方
「おい」



いつも通り朝飯を食べていると目の前に仁王立ちで立つ土方



『ふぁんや(なんや)』



口いっぱいにご飯を詰めたまま聞き返す



土方
「お前、今日明日休め」



『は?』



土方の言っている言葉の意味が分からない



土方
「朝飯後から明日の夜までお前に休暇をやる」



ゴクッ…

『は?どういう事や』



土方
「隊士達が言ってるんだよ
お前が休んでる所を見た事が無いってな」



『だからなんやねん』



土方
「お前いつも何時に寝ている」



『えっと…12時』



土方
「じゃあ朝は何時に起きている」



『4時』



土方
「その睡眠時間で足りてるのか」



『え、充分やけど?
前までは2時に寝て5時に起きてたで前より長くなっとるで?』



土方
「だとしても短すぎないか?」



『そうか?普通やで
それより、この前三徹して目の下に隈を作って人殺しそうな目ぇしとった奴はどこのどいつや?』



土方
「グッ…」



沖田
「姐さんの方がよく人殺しそうな目ぇしてやすぜ?」



『あ"ぁ!?』



近藤
「まぁまぁあなたさん、トシも心配してるんです」

「男の中に女性が1人でなかなか気が休まらないでしょうけど皆あなたさんに休息をとって欲しいんですよ」



近藤の言葉に頷くようにあなたを見つめる隊士達



『休息言うたって趣味とか特技とかは料理やし、特別したい事なんてあらへんで?』



近藤
「じゃあどこか行きたいとか…」



『どこか…』



行きたい所…音の居場所…父ちゃんの居場所…



それを知りたい…



やけどそんな事言うたら…



『無いな…』



土方
「有ろうが無かろうが休め
いいな」



_ _ _ _ _ _ _ _ _ _



『つーことで暇です』



銀時
「だからって!なんでウチなんだよ!!」



『特別行きたいとこなんて無いし、する事無いし
そして定春が可愛い』



そう言って定春をモフるあなた



銀時
「そうは言っても俺達も今暇してんだよ」



新八
「なかなか仕事の依頼が来ないもんですから…」



『大変なんやねぇ…』

『そういえば神楽ちゃんは?』



銀時
「夕飯の買い物させてる」



新八
「商店街にトイレットペーパー買って来てもらうようにお願いしました」



『暇してんならてめぇらが行けよ』



ガララ



『噂をすれば〜』



新八
「あっおかえり神楽ちゃん」



ただいまも言わずに机の前に仁王立ちする神楽



神楽
「ムフフ」

「ひざまずくアル
愚民達よ」



銀時·新八·あなた
「『「あ?」』」



神楽
「頭が高いって行ってんだヨ
この貧乏侍どもが!!
工場長とお呼び!」



銀時
「女王様の方がいいんじゃねぇーのか工場長?」



『うちは貧乏とはちゃうけどな工場長?』



神楽
「女王様なんかより工場長の方が生産的だから偉いアル!
やせこけた工場長とお呼び!!」



『やせこけとってええんかいな』



新八
「工場長
トイレットペーパー買ってきてくれた?」



神楽
「トイレットペーパーは忘れたアルけど」



銀時
「オイ 勘弁しろよ安売り今日までなんだぞ工場長!」



神楽
「ケツ拭く紙は忘れたけど
もっと素敵な紙は手に入れたヨ」



そう言って抱えた紙袋に手を突っ込み何かを取り出した



神楽
「ムフン」



その手には宇宙への旅のチケットがあった



新八
「宇宙への旅四名様!?」



銀時
「こっ…工場長ォォ!!」



『よっしゃあ!暇が潰れたァ!!』




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