第63話

一番隊隊長の姉は姐さんの親友
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2021/08/22 15:00
近藤
「あなたさん
今日客人が来る予定なんだお茶出し頼めるかな」



『ええけど…もしかして松平の野郎やないよな?』



近藤
「違う違う!俺たちの古くからの友人でね 総悟のお姉さんなんだ」



『へぇ女性の客人とはこれまた珍しい
それも総悟くんのお姉さんねェ』



そういえば田舎にいた時の親友が沖田って言う苗字だった気が…



「すみませ〜ん」



門の方から女性の声がする



近藤
「あっもう来たかな
じゃあお願いします」



『ほーい』











淹れたてのお茶と簡単な茶菓子をお盆に乗せ客間の襖を開ける



『失礼します
お茶と茶菓子をお持ち致しました…』



そう挨拶をして顔をあげるとそこには見知った顔があった



「あら…」



『え…なんで…』



近藤
「え?」



見つめ合う2人に戸惑う近藤



「あなたちゃん…よね」



『ミ…ツバ…』



そこには田舎にいた時の親友の姿があった



近藤
「え?知り合い?」



ミツバ
「あなたちゃん心配してたのよ
お店に電話しても繋がらないしお店に行ったらお休みだって貼ってあったし声をかけてもなんの反応もなかったから…」



『あぁホンマごめんな』

『色々あって江戸に来ることになったんやけど なんせ江戸に知り合いなんかおらへんかったから
宛もなく歩いとったらここに拾ってもらってここで働いとるんよ』

『連絡もせんでホンマごめんな』



ミツバ
「そうなのね
まぁでも良かったわ元気そうで」



近藤
「え?二人知り合いだったの?」



ミツバ
「隣町の定食屋さんでね そこの料理がめっぽう美味いって聞いて良く通ってたの
通ってるうちに仲良くなって一緒にお出かけもたくさんしたわ」



『ミツバ よくうちのいっちばん辛い麻婆豆腐を余裕で食いよるんや ホンマよぉ食べるなァ思うてたんよ
最後の出前もそれやったなぁ』



ミツバ
「そういうあなたちゃんだってお出かけに行っても真っ先に調理器具屋さんに行くんだもの
無理にでも引っ張って行かないとなかなか進まないのよ」



近藤
「そ、そうなんですね」

「それよりミツバ殿 今日はどういう用件で」



ミツバ
「そうだったわね」

「私結婚することになったの」



『ホンマに!?』



ミツバ
「ええ」



近藤
「そうかそうか
いや それはめでたい
式にはぜひ真選組総出で出席させてもらうよ」



『ぜひうちも参加させてもらうわ』



ミツバ
「でも正直結婚なんて もう諦めていたのよこんな身体だし」

「こんなオバさん誰も もらってくれないって…感謝しなきゃね」



近藤
「いやいやミツバ殿は昔と何も変わらんよ」

「キレイでおしとやかで賢くて
総悟もよく話していたよ」

「自慢の姉だって」



ミツバ
「もう!おだてても何も出ないわよ」








3人で笑いながら話す部屋の外では野郎共がコソコソと中を覗いていた



『…ちょっと失礼』



その気配に気がついていたあなたは野郎共を散らそうと立ち上がった



するとその瞬間



ドフゥッ



襖が勢いよくはずれ野郎共が宙に舞う



『ありゃ』



ミツバ
「まァ相変わらずにぎやかですね」



近藤
「おーう総悟やっと来たか」



その先にいる沖田は山崎に剣を向ける



沖田
「すんません コイツ片付けたら行きやすんで」



ミツバ
「そーちゃんダメよ お友達に乱暴しちゃ」



ミツバを一瞬睨むと人が変わったように



沖田
「ごめんなさいおねーちゃん!!」



ガバッと膝をつき頭を下げる沖田に周りの隊士達も驚きを隠せない



近藤
「ワハハハハハ!相変わらずミツバ殿には頭があがらんようだな総悟」



沖田
「お久しぶりでござんす姉上
遠路はるばる江戸までご足労ご苦労さまでした」



頬を染めながら挨拶する沖田



『え…えぇ…』



山崎
「…誰?」



近藤
「まァまァ姉弟水入らず邪魔立ては野暮だぜ」

「総悟 お前今日は休んでいいぞ
せっかく来たんだ江戸の街まで案内してやれ」



沖田
「ありがとうございます!!」

「ささっ…姉上!!」



ミツバの手を引き去っていく沖田



『あ!ミツバァ!落ち着いたらまた一緒に出掛けよな!!』



ミツバの背中に声を掛けるあなた



ミツバ
「ええ!また行きましょうね!」





山崎
「局長…なんですかありゃ」



近藤
「アイツはなァ 幼い頃に両親を亡くして それからずっと あのミツバ殿が親代わりだったんだ
アイツにとってはお袋みてーなもんなんだよ」

「今日くらいいいだろ
男にはああいう鎧の紐解く場所が必要なんだ」

「特にアイツのように弱味を見せずに片意地張って生きてる奴ほどな」



山崎
「…わかりました」

「今日の沖田さんは見なかったことにします」




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