第67話

女は恋バナ好きが多い
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2021/08/30 15:00
ある日の昼下がり



あなたはいつも通り定食屋で父の作った料理を客の元に運ぶ



「まぁ美味しいわ」



『やろ?父ちゃんの作る飯はホンマ美味いんやでェ』



美味しそうに頬張る客に笑いかけるあなた



カラカラ



店の扉が開き1人の女性が顔を覗かせる



『いらっしゃーい
1名様ですか?』



「あの…ここって"洪庵亭"であってます?」



『あってますよ?』



「良かったわ
ここのご飯が美味しいって聞いて隣町から来たの」



『隣町から来はったんですか!?
ありがとうございます!』

『あそこの席空いてるんで食べたいもん決まったら呼んでくださいね!』



ミツバ
「ありがとう」



それが私達の出会いだった







その日



ミツバはうちの店で1番辛い麻婆豆腐をペロリと完食させた



『さすがのうちでも無理なんに…』



洪市(父)
「お嬢さん ワシと趣味が合いますなァ」



辛い物好きな父がミツバに興味をもったように話しかける



ミツバ
「美味しかったです
また来てもいいですか?」



『いつでも来てええですよ
せや うち出前もやっとるさかい これに電話してくれたら届けたる!
隣町から来るんは大変やろうしな』



ミツバ
「そうなのね
じゃあ使わせてもらおうかしら」



『まいどあり!』











それから2人が仲良くなるにはそう時間もかからなかった



出前で家まで行ったり 店まで来てくれたりして仲良くなり2人で出掛けるようになった



時には他の定食屋に寄ったりしておしゃべりをしたり近くの街まで行って買い物に行ったりした





『これもええなァ』



調理器具コーナーを眺めるあなた



その後ろでミツバがニコニコと笑っている



ミツバ
「あなたちゃんこの前もそれ見てたでしょう
次行きましょう?」



『あとちょっと…』



頑なに動こうとしないあなたの着物の袖を引っ張り連れていこうとする



『ちょっと…!』



ミツバ
「行きますよぉ〜」



『あぁ〜あ〜あ〜うちの出刃包丁ォォォオオ』



ミツバ
「それよりいいの?
食べ放題は?」



『!!行く!行きますっ!』



ミツバ
「ふふ」








傍から見れば2人は友達というより姉妹に見えていただろう



姉として時には母として弟を育てたミツバ



大好きな兄の背を追い続けたあなた



2人とも今は一緒に暮らしてはいないがその癖は抜けない





ミツバ
「まぁ!あなたちゃんそんなにいっぱい」



あなたの皿に山盛りに盛られた料理に驚きの表情をする



『こんなんじゃ足りへんて』

『そういうミツバやってそんなに七味かけたら身体に悪いで』



ミツバ
「だって美味しいんだもの」



『ホンマに辛いもん好きなんやな』






ミツバ
「ねぇあなたちゃん
好きな人っているの?」



『ん"!?ん"ゴホッゴホッ…』



ミツバからの突然の質問に思わずむせてしまう



『え…なんで…ゴホッ』



ミツバ
「だってこの間私の好きな人の事話したでしょう?
あなたちゃんの好きな人も聞きたいなぁ〜」



そうやってニコニコ微笑むミツバ



『好きな人なァ…』



好きな人と聞いて考えるあなた



ぱっとその時に思い浮かんだのは銀髪パーマの後ろ姿だった



((いやいやいや 絶対ない
銀ちゃんの事なんか好きやないしっ))



ミツバ
「銀ちゃん?」



『え?』



ミツバ
「その"銀ちゃん"って人が好きなのね」



『え?はぁ!?ちゃうって!』



ミツバ
「ふふどんな人なの?」



『声に出とったんかい…』

『どんな人って…』



『白髪の天パで 死んだ魚みたいな目しとって 足が臭くて 馬鹿で だらしない
そのうえうちの邪魔ばっかしてきよる』

『そんな奴やな』



ミツバ
「うふふ
本当に好きなのねェ」



『だからちゃうって!』



ミツバ
「うふふ」



『"うふふ"やないねんて!!』



何度否定しても微笑み続けるミツバに堪忍したあなたは



『絶対好きなんかやあらへんっ』



と吐き捨てた



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