第93話

兄妹愛
802
2021/10/22 15:00
その戦は沢山の仲間を失った



だが勝利の旗はこちらに上がった



『濶兄ィ〜 水ゥ〜』



そう言いながら兄の元へと寄っていく少女



その少女は普通の少女と違い全身が血塗れていた



今回の勝利は ほぼあの少女とその兄の二人のおかげだと言っても過言ではない



山縣は助けて貰った後立ち尽くすことしか出来なかった



運良く敵が来なかったため生き残っているのだ



ほとんどの敵が兄妹二人に倒されていった



その兄妹は戦場から離れるとぱっと摂津の鬼神の表情から兄妹の顔になる




「俺の分もあるんやで残しといてな」



『ゴクゴクゴク…プハァ!』

『ほい濶兄ィ』



そう言って兄に水筒を渡す




「あ!ほとんどあらへんやないか!!」



『あっはは やって喉乾いとったんやもん』




「もんやないわ!ホンマ…可愛ええなァ!」



少年は怒るどころか少女の頭を撫でる



『あっはは☆』



少女もどこか幸せそうだ



高杉
「てめぇら気持ち悪ィぞ」



「『知っとるし〜』」



この兄妹は互いに愛し合う仲のいい兄妹なんだと感じた







拠点に戻ると兄妹の姿を見た妹が声をあげる



「あっ!兄ちゃん!姉ちゃん!まった血まみれになりよってェ!!
着物を洗うこっちの身にもなってェや!!」



『血まみれにならん方が難しいんや!』

『じゃああれか?甲子園球場であともうちょっとでアウトになりそうな所でもスライディングするな言うんか!?』




「せやでェ音ォ
昔っから知っとるやろォ俺らがこういう闘い方しか出来やへんこと」




「ハイハイそーやねー」

「まあとりあえず風呂入ってきや」



呆れたように吐き捨てる音



「『あいあいさー!』」



濶とあなたは素早い動きで風呂場へ向かって行った




「怪我しとる人ははよォ中入ってや!
ちゃっちゃと手当てしたるさかい」



そう言って声をあげる少女



山縣はこの兄妹のたくましさに自分の惨めさを感じた








音に手当てしてもらった後 屋敷内を歩いているとある部屋から声がした



そこには銀時 高杉 桂 そしてあの兄妹がいた



銀時
「てめぇら兄妹何もんなの?
え?怖いんだけど?」




「"摂津の鬼神"や
それ以上でも以下でもあらへんで」




「いつか俺たちの仲間も貴様らにやられてしまいそうだ」



『さすがに敵味方の区別はついとるて
うちらに敵意を向けてくる又はうちらが敵やと判断したんが敵
それ以外が仲間』



高杉
「そんなもん意識の問題じゃねぇか」




「そりゃそーや
昔は夜道であなたが仲間
それ以外の輩が始末対象
そんなんでやっとったでなァ」




「だからか…仲間を率いたりしないのは」



「『自分の剣以外に信じられるんは 濶兄ィ/あなた の剣だけやからなァ』」



銀時
「ハモリやがって」



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