第57話

そのクセェ口閉じやがれ
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2021/08/08 15:00
とまぁ…



その後も上手いこと口を回されて今現在に至る



条件として女中として今まで通りする事

買い出しの時にちょっと市中見回りに行く程度でほぼ変わりはなかった

ただ1つ変わったのは隊士として帯刀ができるようになった事

今まで袖に隠していたがそれも堂々と腰に下げることができた事だった

それによって着物も少し動きやすいのに変えた

たまに奉行所の人に声を掛けられるが警察手帳も渡されそれをかざして何とかやっていた









ある日の買い出し中



両手いっぱいに荷物を抱え通りを歩く



「きゃあああ!!斬り合いよォ!」



通りの真ん中で突如始まる斬り合い



浪士7.8人がお互いに刀を構え向かい合っている



『今日は荷物多いんやけどな…』



「おのれぇ!貴様らァ」



互いに切りかかろうとする その間を何かが素早く通り過ぎる



ガキンッ カランッ…カラン…



その瞬間浪士達の刀が折れ地面へと転がった



二本の刀が腰に掛けた鞘に収まる



『あっはは☆
真っ昼間から街の真ん中で斬り合いとは
血気盛んなやっちゃなァ』



「お主何奴!?」



『真選組女中兼零番隊隊長 緒方あなたと言うもんや
斬り合いするんはアンタらの勝手やけど昼間はやめてくれ
通行人の邪魔になるやろが』



浪士達の方へと振り返り睨みを利かすあなた



その様子に浪士達も怯えた表情を見せる



「しっ真選組零番隊だとォ!?」



「噂によりゃァアホ程強ぇらしいぞ!」



「女の癖にっ!!」



『あっはは…"女の癖に"…ね
女やからって舐めた口効いとると痛い目見るぞ野郎共
血祭りにしたくなきゃァそのクセェ口閉じやがれ』



「ぐぬ…おのれぇ!」



一人が折れた刀を振りかぶる



だがあなたがスっと手を引くと立ち尽くしていた浪士諸共 足を掬われ地面へと頭を打ち付ける



あなたの手には数本のタコ糸が巻きついていた



そのタコ糸はあなたの手から浪士達の足へと結ばれている



『聞こえんかったんか
そのクセェ口閉じやがれって
酢豚用のタコ糸が役に立ったわ』



「き…貴様ァ…」



『次その口開いたら 一生お喋りが出来んよう 首 掻っ切ったろか…?』



首元で親指でクイッと切る



「クッ…」



『緒方あなた様の降り立つこの街で悪事をしようなど安易な考え通づると思うなや』



地面に倒れ込む浪士を見下しながら言う



「ここで浪士達の斬り合いが起こったって!」



するとそこへ通報を聞きつけた隊士達がやってくる



「ってあれ…姐さん!」



『あちょうどええ所に』

『野郎共捕まえといたから後はよろしくな』



「あ…わかりました!ありがとうございます!」



『はいは〜い』



「き…貴様ァ…」



『うるせェ』



「ガッ…」



足元で喚く男の頭をグリグリと地面に押し付ける



『いい加減にせぇや
ホンマに殺すぞ』



「ヒッ…ヒャイ…」



『…あぁ!街の皆さん!こいつらはもう捕まえたんで安心してくださいね!』



その一言に巻き上がる歓声や拍手



「あの…買い物袋 さっき地面に落としてきましたよ」



『あ…ありがとうございます!』



「あのさっきはほんとにかっこよかったです!
女性なのにあんなにも強いって憧れます!」



『あ…ありがとうございます…』



戸惑った表情で微笑む



「もし良かったらなんですが…ファンになってもいいですか?」




『ファ…ファン?』



「私も!」



「俺も!」



「僕も!」



『あ…えっとォ…』



街人達から上がる声にさらに戸惑いの表情を浮かべる



「いいんじゃないですか?」



浪士達に手錠をかけながらそう言う隊士



「なんなら俺達 もう既に姐さんの1ファンですよ!」



『なんやそれ…』

『ま…まぁ…どうぞご自由にィ…』



そう困った表情で街の人達に背中を向け立ち去るあなた



だがすぐに先程の表情とは裏腹に険しいものになっていた



((女性なのに…ね))



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あなたちゃんのファッションショー!!!




左から

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討ち入り·決戦の時

非番の時(私服)

です

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