第9話

#9
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2018/09/27 20:34
俺はじんたんを見つめる。

何も言わず、ただ真っ直ぐと。

するとじんたんは俺と目を合わせずに背中を向けた。


「じんたん」

「…っどうしたの」


動揺したような、声。


「じんたん、さっきからどうしたの」

「何が…?」

「様子が変だって、目合わせようとしたら逸らすし、背中は向けるし」


じんたん教えて。

じんたんは俺のこと、本当に友達だと思っているの?

何年か一緒に過ごして、こんなこと一度もなかったのに。

俺はじんたんの背中に優しく触れた。


「っわぁ、」


びくっと跳ねる身体。


「ほら、どうして?そんなに驚いて、もしかして本気で俺と同じ布団に入るの、嫌だったりした?」

「違う!!そうじゃなくて!」


じんたんの予想外な大きな声で俺は我に返った。

じんたんは心なしか少し怒っているような気がした。

あ、ちょっと意地悪をしすぎたかもしれない。


「…いや、なにマジになってるの…冗談だから」


ごめん、じんたん。

ああ、じんたんを困らせてる。

こんな風になってしまうのは、やっぱり俺…。


「もう…なんか……」


じんたんが途切れ途切れに話し始めた。


「いつも、一緒にいるのに、」


じんたんの声が、震えている。


「うん」

「同じ布団に入ってから、へんに緊張してるし…」


その言葉を聞いて、俺は心臓が跳ねた気がした。

じんたん、それって、やっぱり。


「なんか…俺もう…わかんないよ」


ああ。


「じんたん、」

「こっち向いて」


いけない。


「いやだ」


じんたんのその気持ちは、もっていてもきっと幸せにはなれない。


「向いて」


俺が、いけないんだ。


「いやだ!」


ああ、だけど、


「こっち向かないと、抱きしめるよ」


それでも、じんたんのその気持ちが嬉しくて仕方ない。

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