ずっとじゃなくてもいい。
今だけでも、せめて…。
俺は、おもむろにじんたんの手をとる。
そしてそのまま指を絡めた。
「…っテオくん」
じんたんを真っ直ぐジッと見つめて躊躇いながら、口を開いた。
「今だけ…今だけなら、“寝ぼけていた”で済まされるけど……どうする?」
心臓が、自分のものとは思えないくらい、バクバク言っている。
これが、今の俺の精一杯の告白。
じんたんの顔がみるみる林檎のように赤くなっていく。
そんなじんたんを俺はそっと抱きしめ、足を絡めた。
じんたんも、俺の背中に手を回す。
じんたんの香りが、身体全体を支配したときなんとも言えない幸福感で胸がいっぱいになって、涙が出そうになった。
抱きしめたまましばらく経つとじんたんから、規則的な寝息が聞こえた。
ねえ、やっぱりさ、さっきの言葉取り消してもいい?
今だけじゃなくて、ずっとずっと、この先もずっと俺だけのものになっていてほしい。
今は、こんな卑怯なやり方しかできなくてごめん。
不甲斐ない俺を、どうか許して。
いつか、必ず伝えに行くから。
今はただどうしようもなく、君のことが、
fin.
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!