いつの間にか風呂から上がってきたのか
体操座りになって膝に顔をうつ伏せたままだったので、若利の接近に気付かなかった
チラッと覗くように顔を少しだけ上げると
風呂上りで若利の髪は少し濡れていて
首にタオルを掛けていた
素っ気なく返事をする
お互い無言が続くが、それも長くは続かず
再び若利が口を開く
若利のバレー ……
あぁ、そうだ。
そういえば見て欲しいって言ってたな
そう言えば、また「そうか」
と口にするだけだが
少し落ち込んでいるようにも見える
真剣な眼差しを向ける若利に、
目を合わせられなくて視線を下に落とす
どうして、私に見てほしいのだろう
褒めて欲しいの?
私じゃなくったって、若利が見てと言ったら
みんなきっと見てくれるし
何をしようともみんな若利を褒めてくれる
眉間にシワを寄せて、ムスッとした様子でこっちを見る
やめろ高校生男子がそんな事しても可愛くないから
それだけ言って私は立ち上がり、扉に手を置く
たかが学校に行くだけなのに、まるで自分の事のように喜んで微笑みを零してみせた若利
たかが… 私が学校に行くだけ
それだけ……
なんなの、ほんと…
出来損ないの妹なんて、ほっとけばいいのに ………
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編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!
転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。